今回は、背中の痛みと内臓の関係や、病院にかかるべきケースなどについて、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックの安江千尋院長に聞きました。
Q.筋肉のこりや姿勢の悪さではなく、内臓の病気が原因で背中の同じ場所が続けて痛むことはありますか
筋肉のこりや姿勢の悪さだけでなく、内臓の病気が原因で背中の同じ場所が続けて痛むことはあります。臓器の痛み(内臓痛)は、脊髄で体の表面の感覚と一部「配線」を共有しています。同じ神経ルートをとおるので、脳が痛みの出どころを取り違えることがあります。
そのため、実際には内臓が原因でも、脳が背中の皮膚や筋から来たものと誤認し「関連痛(臓器など本来の痛みの発生源とは別の場所に痛みを感じる現象のこと)」として背中に現れるのです。
なお、臓器によって、痛みを感じる背中の部位は異なる傾向にあります。
・胃・十二指腸:みぞおち〜背部
・胆のう:右肩甲部〜背中
・すい臓:みぞおちから帯状の背部痛
・腎臓:わき腹〜背部へ広がる痛み
Q.背中の痛みが内臓の病気によるものと、筋肉痛やこりやハリによるものとで、伴う症状や痛みの性質はどのように違いますか
内臓の病気が原因で起こる背中の痛みでは、全身/臓器特有の症状を伴いやすいです。具体的には、吐き気・食欲低下・発熱・冷汗、黄疸(目や皮膚が黄色い)、尿の色変化や排尿時痛・血尿などがあります。痛みが食後に悪化したり、脂っこい食事・飲酒で悪化したりすることもあります。また内臓由来の痛みは 「深く鈍い・差し込む/締めつける」ような性質が特徴です。痛みは持続的、または疝痛(せんつう:波のように強くなったり弱くなったりする痛み。結石でよくある)として現れ、夜間も続くことがあります。姿勢を変えたり押したりしても、痛みはあまり変わりません。
一方、筋由来の痛みの場合、全身症状はほとんどなく、局所のこりや圧痛点がはっきりしています。痛みの性質は表層面のだるさやハリで、押すと再現されます。動かす/ひねる/同じ姿勢を続けるなどで悪化し、温めやストレッチで軽快しやすい特徴があります。

