「隣の席に座るだけで、セクハラになりますか?」
ある男性がSNSに投稿した問いが、共感と議論を呼びました。投稿によると、男性は女性の部下と出張することになり、「新幹線で隣同士の席をとってもいいのか」「セクハラにあたらないか」と悩んでいるといいます。
この投稿には「セクハラをするような男性上司ではなかったけど、新幹線でずっと隣席でつらかったです」「現地集合現地解散で良いのでは」など、さまざまな声が寄せられました。
出張や研修などで、上司と部下が2人で移動する場面は少なくありません。とくに男性上司と女性部下という組み合わせでは、「配慮しているつもりでも、相手に不快感を与えるかもしれない」「逆に気を遣いすぎて不自然になる」といった悩みも聞かれます。
では、移動や宿泊をともなう出張時の行動で、どのような点がセクハラと受け取られやすいのでしょうか。企業や管理職が注意すべきポイントについて、竹内省吾弁護士に聞きました。
●新幹線で「隣席」や雑談はセクハラ?
──新幹線や飛行機での「隣席」や「雑談」が、どのような場合にセクハラとみなされるのでしょうか。
セクハラは「性的言動により就業環境を害する行為」です。
業務上必要のない場面であっても、隣席や軽い雑談だけでは通常セクハラには該当しません。「上司が隣だと、くつろげない」といった理由だけで、法的請求が認められるのは難しいでしょう。
ただし、毎回隣席を指定する、不必要な身体接触、性的な内容を含む私的雑談の強要などが加わると、セクハラに該当し得ます。
●宿泊先も別フロアに「断りづらさ」生まない工夫を
──上司と部下の2人出張において、企業や管理職が注意すべき点を教えてください。
たとえば新幹線の席は、原則として別席(通路を挟む・前後の席など)を手配して、必要な場合のみ「隣でも大丈夫か」を事前に確認する方法は一つです。
ただし、その際に従業員が断りづらい雰囲気になれば意味がありません。心理的圧力を与えない聞き方を徹底することが重要です。
宿泊先については、隣室を避けて、可能なら別のフロアにする、チェックインは各自でおこなうなどの配慮が、セクハラ防止の観点からは望ましいです。
そこまでの対応が難しい場合でも、上司が立場を利用して隣席や行動を強要していないか、ハラスメントが生じていないかを企業として定期的に確認すべきでしょう。

