「アンタだけ顔が違う」
幼い頃から親族にそう言われ続けてきた女性は、10代の頃、一緒に暮らす親が「生みの親」ではないことを知った。
「辛かったことはたくさんあった人生ですが、命があって良かった」
子どもを殺害したり遺体を捨てたりする事件が後を絶たない中、女性は「子どもを手放してもいい」と静かに語る。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●戸籍を見て「やっぱり…」
石川県に住む60代の女性は、高校卒業の際、看護学校に進学するために戸籍謄本を取り寄せた。
受け取った書類には「養母」「養父」の文字。眉をひそめながら読み進めると、生後2カ月以上が経ってから出生届が出され、その後に両親が入籍したことが記録されていた。
「やっぱりな。母と血が繋がっていなくてよかった」
意外にも当時、女性の胸に湧いたのは「驚き」よりも「安堵」だった。
●親戚が集まる場で「アンタだけ顔が違う」
小さい頃から、親戚が集まるたびに「アンタだけ、顔が違う」と言われた。家族はみな肌が色黒だが、自分だけ色白。「私はこの人たちの仲間じゃないんだな」。子ども心に違和感を抱き続けた。
育ての母親は酒好きで、離婚後は交際相手を次々に家へ連れてきた。シングルマザーとして懸命に働いてくれたことは理解するが、自分の夢が叶わなかった理由を女性のせいにし、「アンタさえいなければ…」と繰り返した。
そのため、生みの親でないことを知ったとき、女性は少し気持ちが晴れた。

