化学療法以外の治療法として、放射線治療と造血幹細胞移植も重要な役割を果たしています。これらは単独あるいは化学療法と組み合わせて用いられ、病型や病期に応じて選択されます。ここでは、放射線治療の適応や効果、さらに造血幹細胞移植の種類と適応について詳しく見ていきます。

監修医師:
明星 智洋(江戸川病院)
現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。
放射線治療と造血幹細胞移植
化学療法以外の治療法として、放射線治療と造血幹細胞移植も重要な役割を果たしています。これらは単独あるいは化学療法と組み合わせて用いられます。
放射線治療の適応と効果
放射線治療は、病変部に高エネルギーの放射線を照射してリンパ腫細胞を死滅させる治療法です。悪性リンパ腫は放射線に対して感受性が高い腫瘍であり、限局期の症例では化学療法と放射線治療を組み合わせることで高い治癒率が得られます。特に、早期のホジキンリンパ腫や限局期の濾胞性リンパ腫では、放射線治療が重要な役割を果たします。
放射線治療には、外部照射と内照射がありますが、悪性リンパ腫では主に外部照射が用いられます。照射線量は、病型や治療目的によって異なります。放射線治療の副作用は照射部位によって異なりますが、皮膚の発赤、疲労感、照射野内の脱毛などが見られます。長期的には、放射線照射による二次がんの発生や心血管疾患のリスク上昇が懸念されるため、照射範囲と線量の最適化が重要です。
中枢神経系に浸潤したリンパ腫に対しては、全脳照射や全脊髄照射が実施されることがあります。また、緊急的な症状緩和が必要な場合(脊髄圧迫や上大静脈症候群など)にも、放射線治療が有効です。
造血幹細胞移植の種類と適応
造血幹細胞移植は、再発・難治性の悪性リンパ腫や高リスク症例に対する重要な治療選択肢です。移植には、自家移植と同種移植の2種類があります。自家移植は、患者さん自身の造血幹細胞を採取・保存しておき、大量化学療法後に戻す方法です。大量化学療法により通常量では効果が不十分な腫瘍細胞を死滅させ、その後に造血幹細胞を輸注することで骨髄機能を回復させます。
自家移植の適応となるのは、初回治療で化学療法に感受性があるものの完全寛解に至らなかった症例、再発した症例、初診時に高リスクと判定された症例などです。特に、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫や再発ホジキンリンパ腫では、自家移植により長期生存が期待できることが示されています。移植に向けて、大量化学療法(通常はBEAM療法やLEED療法など)が実施され、その後に凍結保存しておいた造血幹細胞が静脈内に輸注されます。
同種移植は、HLA(ヒト白血球抗原)が適合した他者(ドナー)から採取した造血幹細胞を移植する方法です。ドナーの免疫細胞がリンパ腫細胞を攻撃する移植片対リンパ腫効果(GVL効果)が期待できる一方で、移植片対宿主病(GVHD)という重篤な合併症のリスクもあります。
まとめ
悪性リンパ腫は、早期発見と適切な治療により、長期的な寛解(症状が落ち着いた状態)が得られる方も増えています。初期症状を見逃さず、専門医による正確な診断と病期評価を受けることが重要です。治療後は晩期合併症に注意しながら、定期的なフォローアップと健康的な生活習慣により、質の高い人生を送ることが可能です。気になる症状がある場合には、早めに血液内科や腫瘍内科を受診することが大切です。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「悪性リンパ腫」
日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」
厚生労働省「がん対策情報」

