夜更かしや昼夜逆転の生活を続けていると、気分が落ち込みやすいと感じたことはありませんか? 夜型生活は一時的な疲労だけでなく、体内時計が乱れ気分を調整するホルモンの分泌に影響を及ぼすことが明らかになっています。一方で、睡眠時間や生活リズムを少し整えるだけで、心の安定を取り戻せる可能性もあると専門家は言います。そこで今回は、夜型生活とうつ病の関係、生活リズムの整え方などについて日本精神神経学会専門医の種市摂子先生に詳しく解説していただきました。

監修医師:
種市 摂子(Dr.Ridente株式会社 代表取締役)
香川大学医学部、名古屋大学医学部大学院卒業。救急医療、脳神経外科診療、睡眠診療、精神科診療などを経て、予防医療を目的に、2008年より産業医サービス提供開始。これまでに、楽天株式会社をはじめ、IT企業、ベンチャー企業、IPOを目指す企業を中心に、650事業所以上を支援、ハラスメントゼロ・休職者ゼロのカスタマーサクセスにつなげている。日本精神神経学会専門医・指導医。Well-being向上委員会委員、日本スポーツ精神医学会会員、日本精神神経学会(精神保健に関する委員会委員)、健康経営アドバイザー、睡眠衛生コンサルタント、ストレングスファインダー認定コーチ、日本産業精神保健学会優秀賞、T-PEC優秀専門医。
「夜型生活」とうつ病の関係とは?
編集部
夜型の生活を送っている人は、うつ病になりやすいのでしょうか?
種市先生
はい。夜型の生活は、うつ病のリスクを高めることが報告されています。大規模な疫学研究では、夜型の人は朝型の人に比べて約1.5倍うつ病を発症しやすいという結果もあります。背景には、夜更かしによる「体内時計の遅れ」があり、それが睡眠の質の低下や日中の倦怠感、気分の落ち込みにつながります。心の健康を保つためには、できるだけ決まった時間に寝起きする「生活リズムの安定」が重要です。
編集部
睡眠不足や昼夜逆転がメンタルに及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
種市先生
睡眠不足や昼夜逆転は、脳や神経の働きを直接的に乱します。睡眠不足になると、感情をコントロールする前頭前野の活動が低下し、イライラや不安が強まりやすくなります。また、睡眠による回復が十分でないと、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が増え、うつ病や不安障害のリスクを高めます。たとえ休日でも、起床時間を大きくずらさないよう意識することがメンタルケアにつながります。
編集部
夜型生活と体内時計(概日リズム)の乱れにはどのような関係がありますか?
種市先生
体内時計は、光や食事のタイミングなどで毎日調整されています。夜型の生活が続くと、このリズムがずれて「社会的時差ぼけ」と呼ばれる状態になります。すると、ホルモン分泌や代謝、睡眠の質にも影響が及び、メンタルだけでなく体調全般にも悪影響を及ぼします。朝起きて太陽光を浴びることや朝食を摂ることが、体内時計をリセットする効果的な方法です。
生活リズムを整えるとメンタルが安定する理由
編集部
睡眠時間を少し早めることで、期待できる効果を教えてください。
種市先生
就寝時間を少し早めるだけでも、心身によい効果が期待できます。大規模研究では、普段より1時間早く寝ると、うつ病リスクが約23%低下すると報告されています。早寝によって体内時計が整い、深い睡眠が増えることで脳と体が効率的に回復し、気分の安定や集中力の向上につながります。また、朝の光を自然に浴びやすくなり、セロトニンやメラトニンの分泌が整うため、一日の活力も高まりやすくなります。小さな時間調整が大きな健康効果をもたらすのです。
編集部
睡眠の質を下げる生活習慣には具体的にどのようなものがありますか?
種市先生
睡眠の質を下げる生活習慣にはいくつかの共通点があります。代表的なのは、就寝前のスマートフォンやパソコン使用によるブルーライト曝露で、メラトニン分泌を抑えて入眠を妨げます。また、カフェインやアルコールの摂取は眠りを浅くし、中途覚醒を増やすことが研究で確認されています。不規則な就寝・起床時間や昼寝のしすぎも体内時計を乱し、熟睡感を低下させます。さらに夜遅い時間の激しい運動や過食も交感神経を刺激し、眠りの質を損なう要因となります。
編集部
夜型から朝型に切り替えるために、無理なくできる工夫はありますか?
種市先生
夜型から朝型へ切り替えるには、体内時計を少しずつ前にずらす工夫が効果的です。研究では、朝の太陽光を浴びると体内時計がリセットされ、早寝・早起きが促されると示されています。就寝前はスマートフォンやPCの使用を控え、照明を少し暗めで暖かい色にすることも大切です。さらに、就寝・起床時刻を15〜30分ずつ早めると無理なく定着しやすいことが報告されています。規則正しい朝食や軽い運動も体内時計を整えるサポートになります。

