●話し合いによって調整されると思われる
浜崎さんの所属事務所は大きなグループ会社で、中国法人もあります。一般に、国をまたぐ契約は準拠法や管轄裁判所が複雑になるので、今回でいえば中国法人同士で契約を結ぶ傾向にあります。
そうすると、中国のコンサート運営企業と浜崎さん側の中国法人が契約していることが考えられます。浜崎さん側が主催者に出演料や渡航経費を請求できるかは、主催者と浜崎さん側の契約内容によるかと思われます。
しかし、契約書の内容に関わらず、こういうケースでは話し合いにより調整されることがほとんどです。
浜崎さんは2024年にもアジアツアーを開催しており、中国でのライブ開催は今後も予定され、お互いにとってビジネス上の関係が続くと思われるので、契約書どおりに判断するという可能性は低いように思われます。
なお、2020年に緊急事態宣言が発令されコンサートが次々中止になった際も、多くのライブで主催者とアーティスト側が協議する中で費用負担をしており、今回も裁判に発展する可能性は現状では考えにくいところです。
今回のケースで複雑になってくるのが、浜崎さん側が手配したスタッフ、ダンサー、バンドメンバーのギャラについてです。
たとえば、浜崎さんの日本ツアーでもいつも出演しているダンサーやバンドメンバーが帯同予定であったとすると、ダンサーやバンドメンバーとの契約は、中止を判断した中国企業ではなく、浜崎さん側の日本法人と契約している可能性が高いかと思われます。
そうすると、契約上はダンサー等へのギャラや渡航費の法的な支払い義務は中国の企業ではなく、浜崎さん側に生じる可能性があるかと思われますが、ここについてもまとめて協議していくと思われます。
【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活〜推しから愛される術(東京法令出版)」著者。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:https://rei-law.com/

