くも膜下出血を発症すると目に症状が現れる原因
くも膜下出血が目の機能に影響を与える経路は、主に「動脈瘤による直接圧迫」と「頭蓋内圧の急激な亢進」の二つです。
動脈瘤による脳神経の直接圧迫
脳の血管の根元、特に内頚動脈後交通動脈分岐部と呼ばれる場所にできる動脈瘤は、そのすぐ隣を走っている動眼神経(第III脳神経)を直接押さえつけてしまいます。
動眼神経は、まぶたを持ち上げる筋肉や、瞳孔(ひとみ)の大きさを調整する神経の線維を含んでいます。
動脈瘤による圧迫は、特に瞳孔を小さくする(収縮させる)神経線維に影響が出やすいため、瞳孔が散大し(大きくなり)、光を当てても縮まらないという重要なサインを引き起こします。同時に、まぶたが垂れ下がる眼瞼下垂(がんけんかすい)も発生します。
この動眼神経の麻痺(まひ)は、動脈瘤が破裂寸前であることを強く示す、最も緊急性の高い「赤信号」となります。
頭蓋内圧の急激な亢進
くも膜下出血が起こると、流れ出た血液が脳全体を覆うスペース(くも膜下腔)に広がり、脳全体を強く圧迫します。これにより、頭の骨の内部の圧力(頭蓋内圧、または脳圧)が急激に高くなります。
この非常に高い頭蓋内圧は、目の奥の血管を破り、出血させることがあります(Terson症候群)。また、眼球を外側に向ける動きを司る外転神経(第VI脳神経)を引っ張ったり圧迫したりしやすいため、眼球を外側に動かせなくなり、ものが二重に見える(複視)原因となります。
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くも膜下出血の前兆となる初期症状
くも膜下出血が起こる数時間~数日前には、動脈瘤からのごくわずかな出血(警告出血)によって、以下のような前兆症状が現れることがあります。
救急車を呼ぶ際や、受診時には、症状がいつ始まったか(発症時刻)、頭痛の程度、目の状態(瞳孔の大きさ、まぶたの開き具合)を正確に記録し、救急隊員や医師に伝えられるように準備してください。
警告頭痛
くも膜下出血の前兆として最も重要なのは「警告頭痛」です。これは、本番の激しい頭痛ほどではないものの、「いつもとは違う」、または「首の痛みを伴う」頭痛として現れます。
この症状は、動脈瘤が不安定になり、数時間から数日以内に命にかかわる破裂に至る危険性があることを示唆しています。
すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか: すぐにできる応急処置はありません。症状を落ち着かせようとせず、安静を確保し、直ちに医療機関を受診する準備をしてください。
吐き気・嘔吐、血圧の乱高下
激しい頭痛に加えて、吐き気・嘔吐が止まらないことがあります。また、出血によって一時的に脳が圧迫されると、自律神経(体の機能を自動で調節する神経)が乱れ、血圧が急激に上がったり下がったりする(乱高下)ことも前兆の一つとして報告されています。
すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか: すぐにできる応急処置はありません。安静を保ち、吐き気が強い場合は、吐いたものが気管に入らないように横向きに寝かせるなどして注意しましょう。
意識の変化や頭の違和感
軽い意識の変化(ぼんやりする、話している内容のつじつまが合わない)や、頭の中に「いつもと違う違和感」を感じることが前兆となる場合があります。
すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか: 意識の変化が見られたら、周囲の人はパニックにならず、無理に動かさず、楽な姿勢で寝かせて安静を確保し、直ちに医療機関を受診する準備をしましょう。

