「悪性リンパ腫の生存率」はどのくらいかご存じですか?予後も医師が解説!

「悪性リンパ腫の生存率」はどのくらいかご存じですか?予後も医師が解説!

悪性リンパ腫の生存率は、病型やステージ、治療への反応性によって大きく異なります。全体的な傾向を理解するとともに、予後に影響する因子についても把握しておくことが重要です。ここでは、病型別の5年生存率のデータと、長期フォローアップの重要性について詳しく解説していきます。

明星 智洋

監修医師:
明星 智洋(江戸川病院)

熊本大学医学部卒業。岡山大学病院にて研修後、呉共済病院や虎の門病院、がん研有明病院などで経験を積む。
現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

悪性リンパ腫の生存率と予後因子

悪性リンパ腫の生存率は、病型やステージ、治療への反応性によって大きく異なります。全体的な傾向と予後に影響する因子について理解することが重要です。

病型別の5年生存率

悪性リンパ腫全体の5年生存率は、近年の治療法の進歩により改善傾向にあります。非ホジキンリンパ腫全体では、5年相対生存率は約70〜75%程度と報告されています。ただし、これは多様な病型を含んだ平均値であり、個々の病型では大きく異なります。
代表的なびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、R-CHOP療法の導入以降、平均して5年生存率が60〜70%前後と報告されています。
限局期ではさらに良好で、80%以上の5年生存率が期待できます。濾胞性リンパ腫は低悪性度であり、10年生存率でも70〜80%程度と比較的良好な予後を示します。ただし、完全治癒は困難であり、再発を繰り返しながら長期間付き合っていく疾患という特徴があります。
マントル細胞リンパ腫は、濾胞性リンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の中間的な性質を持ち、5年生存率は50〜60%程度とやや不良です。バーキットリンパ腫は極めて進行が速い高悪性度リンパ腫ですが、強力な化学療法により50〜70%の患者さんで長期生存が得られます。ホジキンリンパ腫は、非ホジキンリンパ腫と比べて全体的に予後良好であり、5年生存率は80〜90%程度です。特に若年者の限局期では90%以上の治癒率が期待できます。
末梢性T細胞リンパ腫は、B細胞リンパ腫に比べて予後が不良な傾向があり、5年生存率は30〜50%程度とされています。ただし、T細胞リンパ腫の中でも病型によって予後は大きく異なり、未分化大細胞型リンパ腫(ALK陽性)は比較的予後良好です。

予後を左右する因子と長期フォローアップ

生存率は統計的な数値であり、個々の患者さんの予後は多くの因子によって影響されます。前述のIPI(国際予後指標)は、年齢、全身状態、病期、節外病変の数、LDH値の5因子から予後を予測します。これらの因子の組み合わせにより、同じ病型でも5年生存率が80%以上から30%以下まで幅広く変動します。
治療への反応性も重要な予後因子です。初回治療で完全寛解が得られた患者さんは、部分寛解や治療抵抗性であった患者さんと比べて明らかに予後良好です。また、化学療法の中間評価時点での反応性も予後を予測する指標となります。PET-CTで評価した代謝反応が良好な患者さんは、不良な患者さんよりも長期生存が期待できます。
遺伝子異常や細胞表面マーカーの発現も予後因子となります。たとえば、濾胞性リンパ腫におけるBCL2遺伝子転座、DLBCLにおけるMYC、BCL2、BCL6の遺伝子再構成(ダブルヒットまたはトリプルヒットリンパ腫)、末梢性T細胞リンパ腫のサブタイプ分類などは、予後や治療選択に影響します。
完全寛解が得られた後も、定期的なフォローアップが重要です。再発のモニタリング、晩期合併症のチェック、二次がんのスクリーニングなどが行われます。フォローアップの間隔は、治療終了後の期間や再発リスクに応じて調整されますが、一般的には治療後2年間は3〜4ヶ月ごと、その後は6〜12ヶ月ごとの受診が推奨されます。検査項目には、診察、血液検査、必要に応じた画像検査が含まれます。

まとめ

悪性リンパ腫は、早期発見と適切な治療により、長期的な寛解(症状が落ち着いた状態)が得られる方も増えています。初期症状を見逃さず、専門医による正確な診断と病期評価を受けることが重要です。治療後は晩期合併症に注意しながら、定期的なフォローアップと健康的な生活習慣により、質の高い人生を送ることが可能です。気になる症状がある場合には、早めに血液内科や腫瘍内科を受診することが大切です。

参考文献

国立がん研究センター がん情報サービス「悪性リンパ腫」

日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」

厚生労働省「がん対策情報」

配信元: Medical DOC

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