反回神経麻痺の治療
反回神経麻痺の治療は、保存療法で経過を見ることもありますが、重度の場合は手術療法が必要です。
適切な治療を受けることで、発声や呼吸、嚥下機能が改善され、日常生活における症状が緩和されます。
保存的療法
軽度の反回神経麻痺では、まず保存的療法が選択され、ステロイドやビタミン剤の投与を行い、神経の回復を促します。
言語聴覚士によるリハビリテーション(音声訓練)も行われ、声帯の可動性や発声機能の改善を目指します。
音声訓練では声帯を閉じる力を強化し、声門閉鎖不全を補うために以下の手法がとられます。
訓練方法 説明
腹式呼吸
・お腹を使って呼吸する方法
(安定した息の流れと圧力を保ち楽に声を出せるようにする)
フローフォネーション
(flow phonation)
・息をしっかり使って声を出す練習法
(声帯に負担をかけずに、息の流れとともに声を出す)
ストローフォネーション
(straw phonation)
・ストローを使って発声する練習
(声帯を守りながら、声を出す感覚をつかむ)
フォワードフォーカス
(forward focus)
・声を鼻の近くで響かせる発声法
(声帯に無理をかけずに、きれいに声を出す)
SOVTE
(半閉鎖声道発声法)
・ストローを使ったり、息を吐きながら声を出す方法
(声帯に優しい発声法を身につけ、負担を軽減する)
手術療法
保存的療法で効果が見られない場合や、重度の麻痺がある場合には手術療法が検討されます。手術にはいくつかの種類があり、状況に応じて適切な方法が選ばれます。
手術名 説明
声帯内方移動術
/ 声帯側方固定術
・麻痺した声帯を動かして声門を閉じれるようにする
(正常な声が出しやすくなる)
甲状軟骨形成術
・声帯の周りの骨格を調整し、声帯が正常に動くようにする
(正常な声が出しやすくなる)
神経筋移植術
・壊れた神経の代わりに他の筋肉を移植する
(麻痺した声帯が動かせるようになる)
気管切開術
重度の反回神経麻痺で呼吸困難が生じているケースでは、気管切開術が必要になることがあります。
気管切開術は、気管に直接穴を開けて呼吸を確保する手術です。
特に両側性の麻痺では、呼吸機能が大きく損なわれるため、早期に手術が必要となります。
反回神経麻痺になりやすい人、予防の方法
反回神経麻痺になりやすい人は、甲状腺や食道の手術を受けた人、肺や縦隔に腫瘍がある人です。
予防としては、甲状腺や食道の手術中の反回神経保護が重要であり、術後の定期的な経過観察もリスク軽減に役立ちます。
人間ドックなどで定期的に検診を受け、腫瘍の早期発見と治療につなげることも反回神経麻痺を防ぐために大切です。
関連する病気
甲状腺癌
食道癌
肺癌
大動脈瘤
縦隔腫瘍
胸腺疾患
肺結核
ウイルス感染(特に水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス)
参考文献
反回神経麻痺の臨床統計的観察/耳鼻臨床/87巻(1994)/p511-517
反回神経麻痺/日気食会報/36巻(1985)5号/p.415-423
両側性反回神経麻痺症例の臨床的観察/耳鼻臨床/84巻(1991)10号/p.1457-1462
声帯麻痺症例の検討/喉頭/31巻(2019) 2号/p.163-167
声帯麻痺の診断と治療/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報/127巻(2024)3号/p.176-179
過去17年間にみられた反回神経麻痺の臨床統計/耳鼻咽喉科展望/29巻(1986)5号/p.559-567
反回神経麻痺に対する外科的治療/日気食会報/37巻(1986)2号/p.126-132
末期癌患者の反回神経麻痺に対する経皮的声帯内シリコン注入療法/Palliative Care Research/1巻(2006)2号/p.321-324
食道がん術後の嚥下障害とリハビリテーション医療の実際/The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine/58巻(2021)8号/p.878-883
両側反回神経麻痺による重篤な誤嚥に対する甲状軟骨形成術Ⅰ型と反回神経再建術併施例/頭頸部外科/29巻(2019)2号/p.163-167
反回神経合併切除時の嗄声予防法/頭頸部腫瘍/29巻(2003)1号/p.146-150
一側反回神経麻痺患者に対する対応と将来の展望/日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌/39巻 (2022)2号/p.87-91
音声障害のリハビリテーション/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報/126巻(2024)8号/p979-982

