悪性リンパ腫の治療後は、身体的・心理的な回復と社会復帰を目指すとともに、晩期合併症への注意が必要です。適切なフォローアップと生活習慣の改善が長期的な健康維持に寄与します。ここでは、化学療法や放射線治療後の長期的影響と、二次がんのリスクやスクリーニングについて詳しく見ていきます。

監修医師:
明星 智洋(江戸川病院)
現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。
治療後の生活と晩期合併症への対応
悪性リンパ腫の治療後は、身体的・心理的な回復と社会復帰を目指すとともに、晩期合併症への注意が必要です。適切なフォローアップと生活習慣の改善が、長期的な健康維持に寄与します。
化学療法・放射線治療後の長期的影響
化学療法や放射線治療は、リンパ腫細胞を効果的に死滅させる一方で、正常組織にも影響を及ぼすことがあります。治療終了後数ヶ月から数年経過してから現れる晩期合併症として、心血管疾患、肺機能障害、内分泌機能異常、不妊、二次がんなどが知られています。
アントラサイクリン系抗がん剤(ドキソルビシンなど)は、累積投与量が多いと心毒性を引き起こすことがあります。心筋障害により心不全を発症するリスクがあるため、治療終了後も定期的な心機能評価(心エコー検査など)が推奨されます。胸部への放射線照射も、心血管系への長期的影響があり、冠動脈疾患や弁膜症のリスクが上昇します。
肺への放射線照射やブレオマイシンの使用は、肺線維症のリスクを高めます。息切れや咳などの呼吸器症状が出現した場合には、肺機能検査や胸部CT検査が必要です。甲状腺機能低下症は、頸部への放射線照射後に比較的高い頻度で発生します。定期的な甲状腺機能検査により、早期発見と適切なホルモン補充療法が可能です。
二次がんのリスクとスクリーニング
悪性リンパ腫の治療後、長期経過の中で二次がん(治療関連がん)が発生するリスクがあります。化学療法や放射線治療によるDNA損傷が、新たながんの発生につながる可能性があるためです。二次がんには、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、固形がん(肺がん、乳がん、甲状腺がん、大腸がんなど)が含まれます。
急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群は、治療終了後数年以内に発生することが多く、特にアルキル化剤やトポイソメラーゼII阻害剤を使用した場合にリスクが高まります。固形がんは、治療終了後10年以上経過してから発生することが多く、放射線照射野内に発生する傾向があります。たとえば、胸部に放射線照射を受けた患者さんでは、肺がんや乳がんのリスクが上昇します。
二次がんの予防・早期発見のためには、主治医と相談しながら適切ながん検診を受けることが重要です。治療歴に応じて、重点的にスクリーニングすべきがん種が異なります。喫煙歴がある方で胸部照射を受けた場合には、低線量CT検査による肺がん検診を検討します。
生活習慣の改善も二次がん予防に寄与します。禁煙、適度な運動、バランスの取れた食事、適正体重の維持などは、がんリスクを低減するだけでなく、心血管疾患の予防にもつながります。治療を乗り越えた後の人生を健やかに過ごすために、長期的な健康管理の視点を持つことが大切です。主治医や専門医と相談しながら、個々の治療内容とリスクに応じた適切なフォローアップ計画を立てることが推奨されます。
まとめ
悪性リンパ腫は、早期発見と適切な治療により、長期的な寛解(症状が落ち着いた状態)が得られる方も増えています。初期症状を見逃さず、専門医による正確な診断と病期評価を受けることが重要です。治療後は晩期合併症に注意しながら、定期的なフォローアップと健康的な生活習慣により、質の高い人生を送ることが可能です。気になる症状がある場合には、早めに血液内科や腫瘍内科を受診することが大切です。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「悪性リンパ腫」
日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」
厚生労働省「がん対策情報」

