3. 人間関係の複雑さと、それに伴う孤独感
医療・福祉の現場は、利用者さんやそのご家族、そして多職種との連携が不可欠なチームワークの世界です。
しかし、だからこそ、人間関係の悩みは尽きません。
<理学療法士のDさんの場合>

Dさんは、職場の人間関係に悩み続けていました。
「あの先輩、いつも機嫌が悪くて話しかけにくい」「派閥があって、職場の雰囲気が最悪」といった状況の中で、医師や看護師との連携も円滑に進まず、深いストレスを感じていました。
<介護職のEさんの場合>
Eさんは、新しい職場で業務内容やマニュアルが定まっておらず、「聞いて覚えるしかない」と言われたことに戸惑いを感じていました。
フロア配属制ではなく、60人もの利用者さんを把握しなければならないことに加え、職員個人間のやり取りがインカムから常に聞こえてくる環境も、ストレスの大きな原因でした。
時には、利用者さんやご家族からのクレームや無理な要求に精神的に疲弊することもあります。
このような状況で感じるのは、「自分だけがこんなに辛いのか」という孤立感です。
周りに相談できる人がいないと、悩みはどんどん自分の中に溜め込まれ、やがて心が限界を迎えてしまいます。
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4. 「真面目」すぎるあなたが、自分を責めてしまう理由
リサーチによると、医療福祉従事者の中でも特に「真面目すぎる人」「完璧主義な人」は、メンタル不調に陥りやすい傾向にあります。
あなたはどうでしょうか?
きっと、利用者さんの小さな変化も見逃さず、少しでも質の高いケアをしようと努力してきたはずです。
上司や同僚の厳しい意見も、自分を成長させるためのものだと真摯に受け止めてきたのではないでしょうか。

しかし、その真面目さや責任感が、ときには自分を追い詰める刃になってしまうことがあります。
「今日のミスは、どうしてあんなことをしてしまったんだろう…」
「どうして、あの時、もっとうまくできなかったんだろう…」
仕事が終わっても、その日の出来事が頭から離れず、家でも仕事のことばかり考えていませんか?
その自己否定感は、決してあなたの能力が低いからではありません。
それは、「ご利用者の命・生活を預かっている」というあなたの強い責任感 が、今の環境では満たされないことへの葛藤なのです。
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疲労のその先にあるもの:あなたは一人ではない、そして道は開ける

あなたが抱えている「つらさ」は、あなた個人の問題ではありません。
それは、多くの医療福祉従事者が共通して抱えている、構造的な問題でもあります。
まずは、そのことを知ってください。
そして、あなたが今、感じている疲労や無力感は、決してプロ失格の烙印ではありません。
それは、あなたが「もっと良いケアをしたい」「患者さんともっと向き合いたい」という、高いプロ意識を持っている証拠なのです。
あなたの心と体がSOSを発している今、自分を責める必要はどこにもありません。
そして、そのSOSに耳を傾けることこそが、未来を変えるための最初の、そして最も重要な一歩なのです。
次のコラムでは、その「つらさ」を「希望」に変えるための具体的な方法について、一緒に考えていきましょう。

