犬と仕事することで生じるメリットは大きい
――ワンちゃんと共に仕事することで生じるメリットを教えてください。松村:まず、社員犬がいてくれることで社内がすごく明るくなります。これは、結構大事なことかなと思っています。
――そうですよね、仕事をしているとギスギスすることもありますし。
松村:はい、そういうこともなくすごく和みます。あと、わんこを介して社員同士の会話が自然に生まれます。
――ワンちゃんの散歩をしていると知らない人同士で会話が生まれることがありますが、そういうことですか?
松村:そんな感じです。たとえば、おやつをあげたり、わんこと遊んでいたら自然と人が寄ってきてみんなでワイワイし始めたり。コミュニケーションのきっかけになってくれるので、すごく助かっています。それもあって、社内の雰囲気はすごく明るいです。
普段から仕事で接しない人とは、なかなか会話がなかったりするじゃないですか? でも、わんこを介してだと、業務で関わらない人とも自然と会話できたり仲良くなれたりします。基本的にみんな動物が好きなので、社員全員とコミュニケーションする機会が自然と生まれるのはすごくいいことじゃないかなって。
――それ、大きいですよね。正直、出社したくなくなる会社とかもあるけど、そうならないのは本当に大きいです。
松村:はい。「今日はどのわんこがいるかな?」と思いながら出社すると、すごく楽しいです。
あと、飼い主にとって「連れてこられる」というだけで安心感は大きいです。家でわんこにだけお留守番をさせ、そんな日に地震が起きたり津波警報が出るのはやっぱり心配なので。加えて、Xを見てくださるとわかると思うのですが、出社するわんこはいつも楽しそうです。人間との触れ合いが好きなワンちゃんは多いし、会社に来れば誰かと触れ合えたり、なんならごはんやおやつもいっぱいもらえるので(笑)。かまってくれる人はたくさんいるから家で退屈しているより刺激もあるし、わんこにとってもいいんじゃないかなと思っています。
――あと、社員犬にしかできない仕事もあるから、会社とワンちゃんはウィンウィンですよね。ちなみに、ワンちゃんと仕事することでデメリットはありますか? たとえば、社員犬にかまけて仕事ができなくなるとか……。
松村:それは、厳密に言うとあると思います。
――ハハハハ!松村:普通にあると思いますね(笑)。もちろん、「オン・オフを切り替えて仕事してください」とは言っていて、社員もそうはしているのですが、やっぱりわんこがいるとついついかまっちゃう。
――それは止められなさそうです(笑)。でも、そういうのも含めてもいいことのほうが多い?
松村:はい、それで生産性が下がることはないと思っていて。逆に、「ちょっと集中力が下がったな」というときにわんこと遊んだら回復することもあるので、そこはみんなうまくやっているんじゃないかなと思います。
手当、休暇など動物関連の福利厚生が充実しまくり
――「うちの社員犬、可愛いですよ」とシェアする目的でXの発信を始めたとのことですが、ワンちゃん好きからの入社希望は絶えないのでは?松村:入社の応募は多くて、採用面でもわんこはすごく活躍してくれています(笑)。岩橋が犬吸いをするポストがXでバズった時期は、求人応募数が10倍ぐらいに跳ね上がりました。「犬と同伴出社できる」といった働き方に関心を持ち、応募してくださる方はすごく多いです。
そんな弊社の働き方として、いろいろな福利厚生を導入している点も特徴の一つです。ウチは動物関連の福利厚生を「わんダフル・ワーキング制度」と呼んでいるのですが、具体的には「うちの子手当」として動物と一緒に暮らしている人には毎月の手当てが1匹につき2000円出ます。また、保護動物をお迎えした場合は手当に1000円上乗せされて3000円が支給されます。それは犬だけじゃなく、私は家にウサギが2頭いるのですが同じように手当をもらっています。
――なるほど、ペット全般に適用されるということですね。
松村:はい、トカゲなども対象になっていて。「じゃあ、カブトムシも対象なの?」と言われると要検討ですが、動物でそれなりに飼育費用がかかる場合は種別に関わらずみんな支給されています。
あと、「動物ボランティア休暇」というものもあります。保護動物の譲渡会のスタッフになったり、シェルターで保護猫のお世話をしたり、社内には動物関連のボランティアをやっている人間が何人かいます。そのボランティア活動を平日に行う場合、年に2日までは有給と同じ扱いになります。つまり、会社から給料を受け取りながら、ボランティア活動に従事することができる。「平日にやっていいですよ」という形で、動物関連のボランティア活動を推進しています。
そして、忌引については実際の家族と同じ扱いになっています。実際の親族が亡くなった場合と同様に、自分のペットが亡くなった場合もお休みを取得できる。これは、岩橋本人がわんこを亡くしたときに感じた後悔が導入のきっかけです。亡くなるときはちゃんと看取ってあげてほしいし、ちゃんとお世話して送ってあげたほうが飼い主の心の負担も減る。後悔や心残りを緩和するための制度でもあります。だから、通常の忌引は亡くなった後に取りますが、弊社では亡くなる前にも取得できます。
――ああ、そうか。「この子、もう長くないかも……」というときから休めるんですね。松村:あと、明確に会社のルールになっているわけではないのですが、ずっと一緒に暮らしていた実家のわんこが「もう、そろそろ……」というときは、実家に戻ってフルリモートで働きつつ、実家で最期を看取ってあげる……という働き方をした事例もあります。
基本的には、子どもと同じ考え方なんです。子どもが病気になったので、お医者さんに連れてかなきゃいけないということはよくあると思うんですね。動物も同じように「今朝、調子が良くなかったから病院に連れて行きたい」と、始業を少し遅くして融通を利かせてもらったり。そういうことは、フレキシブルに対応してもらえます。
私個人としても、それはすごくありがたくて。うちにいるウサギはしょっちゅう体調を崩すので、病院に連れてかなきゃいけないことが頻繁にあるんですね。でも、以前務めていた会社では「うちのウサギの体調が悪いので、今日の出社は午後からでもいいでしょうか?」ってすごく言いづらかったんです。
――かもしれないですね……。
松村:今の会社はそういうことへの理解もあるし、すごく助かってます。
――この考え方がほかの会社にも浸透していけばいいな、と思いますよね。
松村:はい、本当に家族になっているので。

