“公平”を巡るすれ違い
坂上先生は落ち着いて説明を続けた。
「優斗くんはおかわりもしていますよ。でも、あまりに多くおかわりしすぎると他の子がおかわりできませんよね。まずは公平であることが大切なので…」
「じゃあ、うちの子はおなかを空かせたまま午後の学習に入るようになっても仕方ないってことですか?他の子はおなかいっぱいなのに?それって公平じゃないですよね?」
鳴海さんは、椅子から少し身を乗り出しているように見える。
たしかに残飯がないに越したことはないけれど、鳴海さんの主張は自分の意見を押し通すための屁理屈にしか聞こえなかった。周りの保護者がそっと視線を交わした。私は隣に座るお母さんと目が合い、互いに苦い顔をするしかなかった。
(この人、本気で言ってる?)
その場にいる全員が、そう感じていたと思う。
「……お気持ちはわかります。でも給食はみんなのものなので、そこはご理解いただきたく…」
「理解?できないですよ、こんな説明じゃ」
ピシャリと言い切った鳴海さんの声が、教室に響いた。
説明に努めていた坂上先生も、流石にここまで来ると言葉に詰まっていた。周囲の保護者たちは、顔を見合わせる。
(あの人、前回も爪のことで揉めてたよね)
(坂上先生、大変……)
坂上先生は大変な状況だろうに、最後にやさしく、しかしきっぱりと締めくくった。
「優斗くんには、給食当番が配膳した量をまず食べてもらって、おかわりがあれば状況に応じて追加で食べてもらいます。それ以上はルール上できかねます」
教室に沈黙が流れる。鳴海さんは唇をきゅっと結び、納得いかない表情のまま席に荒っぽく座った。懇談会は続いたが、教室の空気はすっかり落ち着きを失っていた。私は心の中で、静かに思った。
(鳴海さん、これで大人しくなるとは思えないな…)
そんな嫌な“予感”は、残念ながら当たってしまうこととなる―――。
あとがき:“うちの子だけ”が生む歪み
今回の出来事は、鳴海さんが“我が子だけを特別扱いしてほしい”という想いを、正当性として押し出してしまう危うさが際立ちました。確かに体格の差や食事量の違いはあるものの、学校には全員が同じ環境で過ごすためのルールがあります。
そこに歩み寄る姿勢が欠ければ、周囲との摩擦は深まるばかり。主人公が感じた不安は、単なる母親の勘ではなく、これから起こる問題の前触れでもあるように感じられました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

