再審法改正に学界から相次ぐ懸念 法学者4人も意見書「立法事実踏まえた改革を」、「第四審」論者も批判

再審法改正に学界から相次ぐ懸念 法学者4人も意見書「立法事実踏まえた改革を」、「第四審」論者も批判

法学を研究する大学教授4人が12月2日、冤罪被害者を救済するための再審法改正の方向性について「立法事実を正しく踏まえ、現在する問題を解消するものでなければならない」と求める意見書を発表した。

この日はこれに先立って、刑事法研究者ら135人が連名で「誤判救済を容易かつ迅速化する再審法改正こそが求められている」と呼びかける声明を発表しており、法制審議会で進む議論に相次いで懸念が示される事態になっている。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●「このままでは深刻な問題を解決できずに終わる」

意見書を発表したのは、青山学院大学の葛野尋之教授、九州大学の田淵浩二教授、國學院大学の中川孝博教授、大阪大学の水谷規男教授の4人。

この日、先立って記者会見が開かれた刑事法研究者ら135人の連名による声明について、葛野教授は「私たちの意見と方向性は一致している」と述べたうえで、その違いを次のように説明した。

「声明は、それぞれの研究者の意見の相違を超えて、一致できる範囲で多数の賛同者を得るためにまとめたもの。他方、私たちの意見は、これまで再審法制度について研究を続けてきた4人がそれぞれ蓄積してきたことを踏まえて、法制審部会の議論を具体的に取り上げて批判し、あるべき方向を示すものです」

そして、袴田巌さんや前川彰司さんなどの冤罪事件を引き合いに出し、「再審制度とその運用は深刻な問題を抱えていますが、法制審の議論を見たとき、このままでは深刻な問題を解決できないままに再審法改正が終わってしまうのではないかという危機感に駆られました」と意見書公表に至った経緯を明かした。

●整合性を重視する意見は「刑事司法の健全性を失う」

現在の制度では、再審を請求する側が「明白な新証拠」を提出するという重い負担を課されているにもかかわらず、検察官の手元にあり裁判所に提出されない証拠へのアクセスが厳しく限定されている。

この点について意見書は「明白な新証拠の獲得が著しく困難であるという構造的問題を抱えている」と指摘。

また、法改正に向けた議論で、通常審とのバランスや整合性を重視する意見があることについて、「誤判を発見・是正されないまま残すこととなる。その結果、刑事司法は、全体としての健全性を失うこととなる」と警告した。

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