畑で出会った野菜たちが
めくるめく独創的料理に変身

「Cucumber バジル」冷製スープの上に散らしたマイクロキュウリのほかに、2種類のキュウリで作ったピューレを合わせ、仕上げに自家製のバジルオイルを回しかける。清涼感のある澄んだ味わいに心身が浄化されるよう
お待ちかねのディナーは、小さな驚きの連続です。まずは、ハーブの温室を併設したFARM BAR でアペリティフを愉しみ、しっとり落ち着いたレストラン「JIMGU」へと移動。
1皿目の冷たいスープには、畑で味わったあの超ちびっこキュウリやヒマワリの花びらが散りばめられています。たくましく育つ作物の風景を思い浮かべながら口に含むと……圧倒的な清涼感! キュウリのみずみずしさやバジルオイルの爽やかさ、ビネガーの酸味が一体になって、体に涼をもたらします。
シグネチャー料理の“Bouquet” は、畑の恵みを表現する1皿。最初に、収穫したばかりの野菜を盛り込んだバスケットがテーブルに運び込まれ、続いて料理の登場。今日、このときの畑を物語る野菜の炭火焼き。そして、4種類のソースにも畑の実りを凝縮し、彩り豊かにENOWAの物語を描きます。
コースは、大分が誇る魚介や肉を織り交ぜた料理が供され、3時間ほどかけてゆったりと進んでいきます。野菜が生む甘味や酸味は唾液を湧かせ、ときに土っぽさやほのかな渋味、ハーブの芳香がアクセントになり、飽きることがありません。おとぎ話に誘い込むような、美しくも愉しい料理が続くのです。
「野菜の個性を表現した料理で
心身をリセットしてほしい」

「Bouquet 林檎 ターメリック 大葉」タシさんのシグネチャー料理。炭火で焼きあげたENOWA FARM の旬の野菜が、皿を彩る。この日のソースはアップル バター、ターメリックとヨーグルト、チャイブとヨーグルト、大葉の4種類
タシさんが、野菜が主役の独創的な料理を繰り出すのは、畑が身近だったチベットでの暮らしや、ニューヨークの「ブルー・ヒル・アット・ストーン・バーンズ」で培った経験に由来します。「ブルーヒル」はいち早く「FARM TO TABLE」を先導し、体現したダン・バーバーさんによる農園併設のレストラン。敷地内で収穫した野菜のコース料理を提供し、タシさんは副調理長を務めていました。その後、ENOWA の思想に共感して来日を果たします。
「かねてから、日本に憧れを持っていました。やまなみハイウェイを抜けて由布院にたどり着くと、急に視界が開けて、街並みが広がっていた。なんて素敵な所なんだろうと、来た瞬間に大好きになりました」
タシさんがめざすのは、野菜それぞれの食感や本来の味をきれいに表現すること。「そのためには複雑にしすぎず、要所に酸味をうまく効かせることが大切」と語ります。
野菜の甘味やうま味を引き上げる酸味は、レモンやかぼすなどの果汁やビネガー、ピクルスなどを活用。常時、8種類以上揃う自家製ハーブオイルを合わせ、香りとコクで下支えをします。宿泊客たちからは「野菜ってこんなにおいしいんですね!」なんて感激の声がこぼれます。

