北海道小樽市。歴史ある運河やレトロな街並みで知られるこの港町に、かつて一匹の「伝説の犬」がいたことをご存じでしょうか?

小樽市消防本部の公式X(旧Twitter)のアイコンにもなっているその犬の名は「ぶん公」。

ただのマスコットキャラクターではありません。昭和の初期、実際に消防隊員と共に火災現場を駆け回り、市民を守り抜いた実在の「消防犬」なのです。

今回は、当時の新聞記事や証言をもとに紐解かれた、ぶん公の驚くべき能力と、小樽市民との心温まる絆の物語をご紹介します。
焼け跡から始まった「消防犬」としての人生
ぶん公と消防隊の出会いは、ドラマのような出来事から始まりました。

昭和初期の小樽は、山と海に囲まれ風が強く、火災が多い地域でした。

ある日の火災現場、焼け跡から一匹の子犬が見つかります。

「犬だ!犬がいるぞ、助けろ!」

消防隊員たちによって保護されたその子犬は、「ぶん公」と名付けられ、小樽消防組(現在の消防本部)で飼われることになりました。

隊員たちに可愛がられ、すくすくと育ったぶん公は、やがて消防署のアイドル的存在、そして頼もしい「相棒」へと成長していきます。
人間顔負け!?新聞も報じた驚きの「特殊能力」

ぶん公が単なるペットで終わらなかったのは、その類まれなる知能と勇敢さゆえでした。 火災発生のベルが鳴り響くと、ぶん公の行動は誰よりも迅速でした。

隊員たちが装備を整えている間に、なんと誰よりも早く消防車に乗り込み、助手席でスタンバイしていたというのです。

さらに、火災現場での活躍ぶりは、当時の新聞(昭和11年5月6日付など)にも詳細に記されています。

記事によると、ぶん公には大きく分けて2つの「お役目」がありました。
ぶん公のお役目
ホースの筒先をくわえて運ぶ:ポンプ車から伸びるホースの先を口にくわえ、放水担当の隊員の元へ走って手渡す。
ホースのねじれを直す:これが人間以上の早業だったと言われています。
ホースが絡まって水が出にくくなると、その箇所を見つけ出し、自ら直して水の通りを良くしていたのです。


