3.デジタルとリアルを融合した「集客」実践術

自社の強みが明確になったら、次はターゲットにその魅力を伝えるための具体的な「マーケティング」手法を実行します。
介護集客には、インターネットを活用した「デジタルマーケティング」と、地域に根ざした「リアルマーケティング」の両方をバランス良く組み合わせることが重要です。
3.1デジタルでリーチを広げる
ウェブサイトとブログで信頼を築く
ウェブサイトは、事業所の顔であり、24時間365日情報を発信してくれる最も強力なツールです。
施設のサービス内容や料金、職員の雰囲気、日々の活動などを写真や動画で分かりやすく掲載することで、利用希望者やその家族に安心感を与えることができます。
・SEO対策
ターゲット層が検索するであろうキーワード(例:「デイサービス〇〇市」)を調査し、ウェブサイトやブログのコンテンツに適切に盛り込むことで、検索エンジンからのアクセスを増やせます。
・ブログの活用
介護に関する役立つ情報や、日々の施設の様子、職員のコラムなどを定期的に発信することは、潜在的な利用者の興味を惹きつけ、信頼関係を構築する上で有効です。
ただし、安易にリニューアルすると、かえってアクセス数が激減するリスクもあるため、専門家の助言を仰ぐことも重要です。
Googleマイビジネス(MEO)で地域にアピール
「Googleマイビジネス(MEO)」は、Google検索やGoogleマップであなたの事業所を上位に表示させるための無料かつ強力なツールです。
まだ取り組んでいる介護事業所は少ないため、今から始めることで大きな差別化効果が期待できます。
写真や営業時間、サービス内容を充実させるだけでなく、利用者やその家族からの口コミに丁寧に返信することで、信頼性を高めることができます。口コミは、利用者が事業所を選ぶ際の重要な判断材料の一つです。
SNSで親近感を醸成する
TwitterやFacebook、InstagramといったSNSは、職員の日常や施設の雰囲気を手軽に伝えるのに最適なツールです。
特に若年層の家族や、介護業界に興味を持つ求職者(コラム1で解説した「介護人材」)にアプローチする上で有効です。
定期的に情報を発信し、コメントに返信することで、ユーザーとの直接的なコミュニケーションを促し、親近感を醸成することができます。
3.2リアルで地域との繋がりを深める
・ポスティング・チラシで地域に根ざす
デジタルが苦手な高齢者層や、近隣住民に直接情報を届けるには、ポスティングやチラシが依然として有効です。
事業所の理念やサービスへの想いを込めたチラシを、ターゲットとなる戸建てやマンションに投函することで、地域の認知度を確実に高めることができます。
・ケアマネ連携で紹介を増やす
介護業界における集客において、居宅介護支援事業所のケアマネージャーとの連携は不可欠です。
彼らは利用者の介護サービスを計画し、事業所を紹介する重要な役割を担っています。
定期的に事業所を訪問し、施設のパンフレットを渡したり、サービス内容を説明したりする「介護施設営業」を通じて、信頼関係を築くことが紹介に繋がります。
ただし、集中減算制度があるため、特定の事業所に偏った紹介はできない点に留意が必要です。
・地域イベントや健康セミナーの開催
施設見学ツアーや、地域の高齢者向けの健康セミナー、介護相談会などを開催することは、潜在的な利用希望者やその家族と直接交流できる貴重な機会です。
参加者は、施設の雰囲気や職員の人柄を直接感じることができ、入居への不安を解消できます。
イベントが好評であれば、参加者の口コミによる集客効果も期待できます。
4.集客の土台となる「インナーブランディング」

どれほど外部に向けた集客活動(アウターブランディング)に力を入れても、職員が自社のサービスに誇りを持てなければ、その効果は限定的です。
そこで重要になるのが、組織内部に向けたインナーブランディングです。
4.1「車の両輪」としてのインナー・アウターブランディング
インナーブランディングとは、「事業所の理念や価値観を職員に浸透させ、組織の一体感を醸成する活動」です。
一方、アウターブランディングは「外部の顧客や市場に向けて、事業所のブランドイメージをアピールする活動」です。
この二つは、「車の両輪」の関係にあり、どちらか一方が欠けても十分な効果は発揮されません。
例えば、外部に「私たちは最新のテクノロジーを活用した質の高い介護を提供しています」とアピール(アウターブランディング)しても、現場の職員が「テクノロジーに苦手意識がある」「面倒くさい」と感じていては、そのメッセージは嘘になってしまいます。
職員が自社のサービスに自信と誇りを持ち、「自分たちは価値のある仕事をしている」と認識すること、それが自然と外部への魅力発信に繋がるのです。
4.2インナーブランディングの実践例
・理念の共有
施設のロゴや制服を一新したり、法人理念を職員全員で再確認する機会を設けることで、組織の一体感を高めることができます。
・職員の巻き込み
職員が自ら施設の魅力を発信するチームを結成し、SNSやYouTube動画の制作に携わってもらうことも有効です。
・コミュニケーションの活性化
介護記録の電子化やチャットツールの導入は、業務効率化だけでなく、職員間の情報共有をスムーズにし、チームワークを向上させます。

