インフルエンザにかかると、高熱や全身の倦怠感に加えて、関節の痛みを強く感じることがあります。この関節痛は、単なる筋肉のこわばりではなく、ウイルス感染に対して身体が免疫反応を起こすことで炎症物質が放出され、関節周囲の組織が刺激されるために生じます。特に発熱の初期から痛みが出ることが多く、膝や肘、肩、腰などの大きな関節に症状が現れやすいのが特徴です。多くは数日から1週間ほどで自然に軽快しますが、感染後の免疫反応が長引くと、痛みが持続することもあります。発熱や頭痛などの症状と重なるため軽視されがちですが、関節痛は身体の回復過程を示すサインでもあります。
本記事では、インフルエンザによる関節痛の特徴や起こる仕組み、痛みが続く期間、そして自宅や病院での適切な対処法を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
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インフルエンザによる関節痛の特徴と痛むメカニズム

インフルエンザの関節痛とはどのような痛みですか?
インフルエンザの関節痛は、発熱や倦怠感とともに現れる全身症状のひとつです。ズキズキする鈍い痛みや関節の重だるさが特徴で、動かすと痛みが強くなることがあります。安静時でも違和感や軽い痛みを感じる場合もあり、全身の節々がこわばるように感じる方も少なくありません。関節そのものよりも、周囲の筋肉や腱、靭帯に炎症が広がることで痛みが増すと考えられています。関節が赤く腫れることは少なく、見た目には異常がみられないことが多いです。
インフルエンザで痛くなりやすい関節はどこですか?
痛みが出やすいのは、膝、腰、肩、肘といった大きな関節です。特に膝や腰は体重を支えるため負担が大きく、歩行や立ち上がりの動作で痛みを感じやすくなります。肩や肘も動かす頻度が高いため、痛みが強く出ることがあります。痛みは左右対称に出ることが多く、広範囲にわたるのが特徴です。手指や足指などの小さな関節は痛みが軽いか、ほとんど感じない場合もあります。関節に熱感や腫れを伴わない点で、関節リウマチや細菌感染による関節炎とは異なります。
インフルエンザで関節が痛くなるメカニズムを教えてください
関節痛の原因は、ウイルス自体が関節に侵入することではなく、感染に対する免疫反応です。体内に侵入したインフルエンザウイルスを排除しようとする過程で、炎症性サイトカイン(インターロイキン、インターフェロン、TNF-αなど)が分泌されます。これらの物質が全身の血流を介して関節周囲に作用し、神経を刺激して痛みを引き起こします。また、発熱による脱水や筋肉の硬直が関節周辺の血流を悪化させ、痛みを助長することもあります。これらの反応は一時的なもので、体温が下がり炎症が落ち着くにつれて関節痛も自然に軽くなります。
インフルエンザによる関節痛の持続期間

インフルエンザで関節が痛み始めるのはいつからですか?
関節痛は、発熱や倦怠感などの全身症状とほぼ同時に現れます。ウイルスが体内に入ると免疫反応が始まり、炎症性の物質が放出されることで関節や筋肉の神経が刺激され、痛みを感じるようになります。症状の出現は急速で、発症初期から関節痛を訴える方が多く、いわゆる節々の痛みとして感じられます。体温の上昇とともに炎症が進むため、初期の数日間は痛みが目立ちやすい時期です。
発熱のピークと関節痛のピークは関係がありますか?
インフルエンザの関節痛は、発熱や全身のだるさなどと同じ時期に強く現れる傾向があります。全身症状のピークは一般的に発症から1〜2日目とされ、関節痛もこの期間に最も感じやすくなります。その後、発熱が下がり始める3〜5日目頃から炎症反応が落ち着き、関節の痛みも次第に軽くなっていきます。関節だけに炎症が集中するわけではなく、全身の免疫反応の一環として痛みが起こるため、解熱とともに改善していくのが特徴です。
インフルエンザの関節痛が治る日数の目安を教えてください
関節痛の持続期間は、一般的に数日から1週間程度です。発熱が治まる頃には痛みも軽くなり、多くの場合は後遺症を残さず自然に回復します。関節の腫れや熱感を伴うことはまれで、痛みが長引くことも通常はありません。体力や免疫の回復により症状は順次改善していきます。

