大切な人がうつ病かもしれないと感じたとき、どのように寄り添い、サポートすればよいのでしょうか。
本記事では、家族や周囲の方ができる具体的な声かけや受診の促し方から、医療機関での診断プロセス、抗うつ薬や心理療法といった主な治療法まで解説します。正しい知識が、ご本人とあなたを支える力になります。

監修医師:
三浦 暁彦(医師)
2018年富山大学医学部医学科卒業。慶應大学病院、国立病院機構久里浜医療センター、国立国際医療研究センター国府台病院等で研鑽を積む。自身が不登校、うつ病となった経験から、誰でも気軽にかかれる医療を目指して2023年6月に「おおかみこころのクリニック」を開院。医師偏在等の精神科医療の問題点を克服するため、遠隔診療の研究にも従事し、2025年9月にAIを用いたオンライン診療所「ココフィー」をリリース。著書「脱うつのトリセツ」
【資格】
日本精神神経学会 専門医
家族や周囲ができるサポートとチェックポイント
うつ病の患者さん本人が自身の状態に気づきにくいこともあるため、家族や周囲の方が変化に気づき、適切なサポートを提供することが重要です。ここでは、周囲の方が注意すべきポイントについて解説します。
行動や様子の変化を察知する
家族や同僚など身近な方は、患者さん本人も気づいていない変化に気づくことができる立場にあります。以前と比べて表情が乏しくなった、笑顔が減った、口数が少なくなった、といった変化は重要なサインです。
生活パターンの変化も見逃せません。いつもより早く起きている、逆に起きられなくなっている、食事の量が明らかに変わった、身だしなみに気を使わなくなった、などの変化があれば注意が必要でしょう。仕事や学業のパフォーマンスが低下している、約束を忘れることが増えた、といった点も気づきのポイントになります。
大切なのは、これらの変化を非難するのではなく、心配している気持ちを伝えることです。
ただし、本人が話したがらない場合に無理に聞き出そうとすることは避けるべきです。話す準備ができるまで待つ姿勢も大切であり、いつでも話を聞く準備があることを伝えておくと良いでしょう。
適切な声かけと受診への促し方
うつ病の可能性がある方への接し方には配慮が必要です。「頑張れ」「気の持ちようだ」といった言葉は、かえって本人を追い詰めることになりかねません。まずは話を聴き、苦しみを理解しようとする姿勢が大切です。
受診を促す際は、押しつけるのではなく、選択肢の一つとして提案する形が望ましいでしょう。「一度専門家に相談してみたら、何か良い方法が見つかるかもしれないよ」「身体の症状もあるようだから、診てもらった方が良いのではないかな」といった声かけが効果的です。
必要に応じて、受診に同行することを申し出るのも良いでしょう。予約の手配や医療機関の情報収集など、実務的なサポートを提供することで、受診へのハードルを下げることができます。ただし、本人の意思を尊重し、無理強いはしないことが重要です。本人が受診を拒否する場合は、まず家族だけが相談に行くという方法もあります。
周囲の方ができるサポートには限界もあります。専門的な治療が必要な状態では、医療機関との連携が不可欠です。家族自身も心理的な負担を抱えることがあるため、必要に応じて家族向けの相談支援を利用することも検討してください。
医療機関でのうつ病診断プロセス
うつ病の診断は、専門的な知識を持つ医師による詳細な評価に基づいて行われます。ここでは、医療機関を受診した際の診断の流れについて説明します。適切な診断を受けることで、効果的な治療計画を立てることができるでしょう。
問診と症状の詳細な評価
医療機関でのうつ病診断は、まず詳しい問診から始まります。医師は現在の症状について、いつから始まったか、どのような状況で悪化するか、日常生活への影響はどの程度かなどを丁寧に聞き取ります。症状の種類、持続期間、重症度を総合的に評価していきます。
過去の病歴や治療歴、家族にうつ病や精神疾患の既往がある方がいるかなども確認されます。現在服用している薬やサプリメントについても報告する必要があります。生活環境やストレス要因、大きな出来事なども診断の参考情報となります。
診断基準としては、国際的基準に基づいて、症状のパターンや持続期間、機能障害の程度などが評価されます。うつ病と診断されるには、一定数以上の症状が2週間以上継続していることが条件となります。
鑑別診断と身体疾患の除外
うつ病の診断において重要なのが、類似した症状を示すほかの疾患との区別です。双極性障害(躁うつ病)、不安障害、適応障害、パーソナリティ障害など、ほかの精神疾患との鑑別が行われます。また、認知症の初期症状として抑うつ状態が現れることもあるため、特に高齢の患者さんでは注意深い評価が必要です。
身体疾患が原因で抑うつ症状が出現することもあるため、身体的な検査も重要です。甲状腺機能異常、貧血、ビタミンB12欠乏、脳の器質的疾患などが除外されます。そのため、血液検査や必要に応じて画像検査が行われることもあります。
薬剤の副作用として抑うつ症状が現れることもあるため、服用中の薬についても慎重に評価されます。ステロイド薬、一部の降圧薬、経口避妊薬などが影響する場合があります。
このような多面的な評価を経て、うつ病という診断が確定されます。診断が確定すれば、患者さんの状態に応じた治療計画が立てられることになるでしょう。診断には時間がかかることもあり、複数回の診察を経て確定されることもあります。

