診断後の重症度評価と治療方針の決定
うつ病と診断された後は、症状の重症度を評価し、それに応じた治療方針が決定されます。個々の患者さんの状態や生活状況に合わせた個別的なアプローチが重要です。
軽症・中等症・重症の分類基準
うつ病の重症度は、症状の数や程度、日常生活への影響の大きさによって分類されます。軽症のうつ病では、症状は存在するものの、日常生活や社会生活は何とか維持できている状態です。仕事や家事は通常より努力が必要ですが、継続できています。
中等症では、症状がより顕著になり、日常生活に明らかな支障が出ています。仕事の能率が著しく低下する、家事ができなくなる、対人関係に問題が生じるなどの状態が見られます。休職や休学を検討する必要が出てくる段階です。
重症のうつ病では、日常生活の基本的な活動さえも困難になります。起床や食事、入浴といった基本的な行動が取れなくなることもあります。自殺念慮が強い場合や、精神病症状(妄想や幻覚)を伴う場合も重症に分類されます。入院治療が必要となることもあるでしょう。
重症度の評価は、治療開始後も定期的に行われます。症状の改善や悪化を客観的に把握することで、治療方針の調整が可能になります。患者さん自身の主観的な評価と、医師による客観的な評価の両方が重要です。
個別化された治療計画の立案
重症度の評価に基づいて、患者さん一人ひとりに適した治療計画が立てられます。
治療計画を立てる際には、患者さんの年齢、性別、妊娠の可能性、合併症の有無、過去の治療反応なども考慮されます。仕事や学業の状況、家庭環境、サポート体制なども重要な要素です。患者さん本人の希望や価値観も尊重されます。
治療の目標は、症状の軽減だけでなく、社会機能の回復、再発予防も含まれます。短期的な目標と長期的な目標を設定し、段階的に治療を進めていくことが一般的です。定期的な評価を行いながら、必要に応じて治療計画を修正していきます。
治療には時間がかかることが多く、効果が現れるまでに数週間から数ヶ月を要することもあります。焦らず、医師と協力しながら治療を継続することが回復への道となるでしょう。
うつ病の主な治療法と選択肢
うつ病の治療には、薬物療法、心理療法、そのほかの治療法など、複数の選択肢があります。多くの場合、これらを組み合わせることで効果的な治療が可能になります。ここでは、代表的な治療法について解説します。
抗うつ薬による薬物療法の実際
薬物療法では、主に抗うつ薬が使用されます。現在、一般的に使用されるのはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)です。これらの薬は脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、抑うつ症状を改善することが期待されます。
抗うつ薬の効果が現れるまでには、通常2週間から4週間程度かかります。すぐに効果が出ないからといって、自己判断で服用を中止することは避けるべきです。十分な効果を得るためには、医師の指示通りに継続して服用することが重要です。
副作用として、吐き気、眠気、口の渇き、便秘などが現れることがあります。多くの副作用は服用開始後の数週間で軽減していくことが報告されています。副作用が強い場合や持続する場合は、医師に相談することで薬の変更や用量調整が行われます。
薬物療法は、症状が改善した後も一定期間継続することが推奨されます。再発予防のため、症状が消失してからも6ヶ月〜1年程度は服用を続けることが一般的です。服用の中止も、医師の指導のもとで徐々に減量していく必要があります。急な中止は離脱症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
認知行動療法などの心理療法
心理療法は、対話を通じて心の問題に取り組む治療法です。うつ病に対して有効性が確認されているのが認知行動療法(CBT)です。認知行動療法では、否定的な思考パターンを特定し、より現実的でバランスの取れた考え方に修正していきます。
具体的には、無意識に浮かぶ否定的な考えや、極端な思考や非現実的な思い込みを修正し、現実的な視点に修正していく治療法です。セッションは通常週1回程度、数ヶ月にわたって行われます。
ほかの心理療法としては、対人関係療法(IPT)も効果が認められています。これは、重要な対人関係の問題に焦点を当て、関係性の改善を通じてうつ症状の軽減を目指すものです。喪失や役割の変化、対人関係の葛藤などが扱われます。
心理療法の効果には個人差があり、すべての方に同じように効果があるわけではありません。また、重症の場合や急性期には、まず薬物療法で症状を安定させてから心理療法を開始することもあります。治療者との相性も重要な要素であり、信頼関係を築けることが治療効果に影響します。

