2017年のある夜、アルバイト中の私に父から1本の電話が入りました。「母が風呂場で倒れた」という知らせでした。昼間、母が「手足が動かしにくい」と訴えていたのに、私は「寒いからじゃない?」と深く考えず流してしまっていました。その後の現実を思うと、あの日の後悔はいまだに忘れられません。
突然知らされた現実
救急搬送された母の診断は、脳出血。右半身まひと言語障害が残ると説明を受け、頭が真っ白になりました。入院中は「少しでもよくなってほしい」と祈るような気持ちでしたが、リハビリの現状は厳しく、退院後の生活でその現実を痛感することになります。
退院後、母はほぼ毎日デイサービスに通いましたが、目に見える回復は少なく、担当の理学療法士の方から「これ以上悪くならないようにしましょう」と言われたときは胸が締めつけられる思いでした。
言語障害でうまく意思疎通ができず、母も私も互いに歯がゆく、イラ立つことも多かったのを覚えています。
変わり果てた母を前に抱えた葛藤
倒れた直後の母の姿は、これまで見てきた母とはまるで違いました。最初のころはその変化を受け入れられず、どうしていいかわからないまま、ただつらさばかりが募っていきました。そんなとき、同じように夫を介護している職場の先輩Aさんが声をかけてくれました。
「しんどいし、つらいよね。でも一番つらいのはお母さん自身だよ。生きていてくれてありがとうって伝えられること、すごいことだよ」
その言葉にハッとさせられ、少しだけ心が軽くなったのを覚えています。

