
コミックの映像化や、小説のコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は鳥トマトさんが描く『東京最低最悪最高!』(『月刊!スピリッツ』)より第12話をピックアップ。
鳥トマトさんが11月12日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、3.5万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、鳥トマトさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
■40を過ぎて3人目を授かった夫婦のリアルな変化

主人公の小林は、妻と10歳の長男、3歳の次男の4人家族。夫婦共に42歳になった時、思いがけず3人目の子どもを授かる。
妊娠判明後、つわりが酷い妻は、子どものお世話やお迎えも難しくなる。土日も働かないといけないほど忙しい小林は、妻の代わりに子どもをお風呂に入れたり、お迎えに行くようになる。しかし、会社の部下も同時期に妊娠し、忙しさはピークに。
ある日、残業をしていると保育園から電話が入り、次男を妻が迎えに行っていないことを知る。へとへとになりながらお世話をし、妻に「一言連絡してよ」と言うと、
「他人のことはもう切り捨てて!」
「3人目なんか…産みたくなかった!」
と自身が限界であることを吐露する。
それから、子どもの「パパのばんはおわりね!」という言葉をきっかけに、自分の人生の“俺の番”は終わった、と悟る小林なのだった…。
作品を読んだ読者からは、「わかるわかるわかる、と夢中で読んでしまった」「これがきっと今の日本の共働き夫婦の実情だよね」「この漫画は自分です」「リアルすぎて心臓止まるかと思った…」など、反響の声が多く寄せられている。
■作者・鳥トマトさん「「本当に実在しそうな性格の悪い人間」の「人生の美しい瞬間」を描くことに全力を…」

――『東京最低最悪最高!』の第12話『俺の番は終わり』は、どのようにして生まれた作品ですか?きっかけや理由などをお教えください。
僕は会社員時代、特に子供がいない頃は(自分としては)一生懸命働いていて、子供がいて突然お休みになってしまう人に対して「なんでこんな大事な時に帰っちゃうんだよ…」と思っていたことが正直ありました。
しかし、いざ自分が子育てしながら働くとなった時に、どうしても人に迷惑をかけてしまうシーンが出てきてしまい「みんなこんな気持ちで自分の仕事を諦めていたのか」ということがやっとわかったんですね。
ということで、そういう気持ちを書き残しておきたいなあと思って漫画にしました。
これは僕だけでなく、会社で子供を育てながら働いているすべての人に起きうる問題だと認識していています。
結果的にこの漫画も「働く親の構造上のジレンマへの問題提起」のように捉えてくださった方が多かったと思います。
――本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
作中作の「タコタのだいぼうけん」のタコが大変憎たらしい顔に描けたので見てあげてください。こういうひょうきんでちょっと邪悪なキャラクターが大好きでして……。
また話が進むにつれタコタのアニメ化と商品化が進んで、だんだん主人公のライセンス担当者とその家族の身の回りのもの(Tシャツ・ぬいぐるみなど)がそのキャラクター商品に侵食されていくのにも注目してもらえると嬉しいです。
このタコに限らず「非実在のキャラクターに人生が侵食される」というのは現代ではあるあるなのでそういったことへのアイロニーも感じてもらえると嬉しいです。
――第12話のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
ポテトチップスを子供が頭から振りかけてくるシーンを気に入っています。あんなことされたら床がベタベタになりますよね笑
でも親も体力・気力ともに限界を迎えてる時って、子供が良かれと思ってやらかした失敗に対して、もう体力がないから何もできず「ワァ……ベッタベタになっちゃったね。ははは(絶望)」って笑うしかできない瞬間があると思うんです。その感じを感じ取ってもらえたら……。
――本作は3.5万件以上のいいねを獲得しています。多くの反響を呼んだことについて率直な感想をお聞かせください。
今のXは、ただリポストやいいねをされても、実はそこまでインプレッションが伸びず、引用ポストをされたときにのみ、たくさん拡散される仕組みになっているように感じます。ですので、ただいいねをしたと言うよりも、何か一言言いたくなって、引用で、感想を述べた人が多かったことが拡散につながったんだと思っています。
僕は漫画を書くにあたり、いつも主人公の目線に没入できるように描いているので、その人を客観的に見た時に「いい」か「悪い」かはかなり賛否両論になるようになっているみたいです。なので、「子供が3人産まれるまでまだ育児が自分ごとじゃなかったなんて信じられない」「こんなやつ子供産むな」といったような本気の罵倒コメントや、「まるで今の自分みたいだった」「あと10年我慢すれば自分の人生が帰ってくるから頑張れ」という熱い励ましをくれる人もいて、まるでそのキャラクターが本当に存在するかのような意見がたくさん集まっていて面白かったです。
自分の描いたキャラクターが他人の人生に入っていく瞬間を見られて嬉しく思いましたし、読者の皆さんもみんなワークライフバランスについては色々な葛藤を抱えているんだなあということがよくわかりました。
――『東京最低最悪最高!』のコミックス第3巻が、2025年11月に発売されましたが、第3巻の見どころをお教えください。
たまに読後感の悪い話が混ざっているのですが、1〜3巻通して読むと全体としては、とても爽やかな飲み心地になっているはずです。途中までで読むのをやめてしまった人は嘘だと思われるかもしれないのですが、本当です!
僕の漫画は一部の読者から「サウナみたいな読み心地」と言われておりまして、途中読むのをやめたくなるくらいしんどいシーンが出てくるのですが、最後まで読むとなぜか爽やかな気分になるという仕様になっています。
ぜひ最後まで読んでみてください♪
――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。
「東京最低最悪最高!」はSNSに載せるたびにたくさんの人から「この人は間違ってる」「私みたいだ、頑張って欲しい」という様々な角度からのアツい感想をいただける漫画で、とても描きがいがありました。読んでいただいた方、感想くださった方、本当にありがとうございます!
「東京最低最悪最高!」は3巻で一旦おやすみとなっているのですが、これからも僕は「本当に実在しそうな性格の悪い人間」の「人生の美しい瞬間」を描くことに全力を尽くして参ります。
鳥トマトの漫画の味を気に入ってくださった方は新連載もやっていますので、こちらもぜひ読んでみてください♪

