最高検察庁が、被疑者を不起訴にした理由の公表を検討するよう全国の検察庁に指示したと報じられた。
これまで警察が逮捕するなどした被疑者が不起訴となっても、検察庁が理由を発表することはほとんどなかった。しかし、社会的な関心が高い事件などについて公表を検討する運用に見直されるという。
NHKによると、最高検は11月、不起訴処分の分類や理由について、事案に応じて積極的に公表を検討すべきなどとする運用方針を決定し、全国の検察庁に周知したという。
公表の判断は、個別の事案ごとにするという姿勢はこれまでと変わらないというが、社会的に関心が高い事件や捜査機関の職員が被疑者になった事件は、処分に関する情報を公開することが国民の信頼を得るために重要だと判断した背景があるようだ。
不起訴には、本人の反省などを考慮して起訴を見送る「起訴猶予」、証拠不足を理由とする「嫌疑不十分」、犯人ではないことが明白な「嫌疑なし」がある。
しかし近年、検察庁が不起訴の理由を報道機関に説明しない例が珍しくなくなっており、関係者の名誉が回復されなかったり、捜査への疑念が深まったりするなどの問題が指摘されてきた。
今回の方針転換はどのような影響をもたらすのか。元検事の西山晴基弁護士に聞いた。
●信頼回復のための「アピール」?
──今回、運用見直しの背景をどう見ていますか。
報道によると、金沢地検が11月21日、不起訴理由を報道機関に原則公表する方針を示したとのことです。
この動きを受けて、最高検が動いた可能性も否定はできませんが、最高検が動くにしても、正直「今さら感」は否めません。
というのも、不起訴理由の公表については、これまでも一地検の判断によって、異なる対応方針が示されることがありました。
とある地検では、新しい検事正の着任を機に、それまでは不起訴理由を公表していたのに、原則公表しない方針に一転したというケースもあったようです。
そもそも、このように、検察庁の取扱いが、「地検によって異なる」「全国で統一的な対応がなされていない」という状態が放置されてきた状況自体が問題だったはずです。
また、後述するとおり、近年の裁判例に照らすと、不起訴理由を公表することは、逆に違法な対応と評価されるリスクもあります。
そうした中で、今年11月に入って、突然、最高検が動いたのには、昨今、冤罪事件などで再び世の中からの批判が高まっている検察庁として、オープンな組織であるとアピールすることで、信頼回復の材料にしようとする狙いもあったのかもしれません。
●不起訴理由の開示は「検察の裁量」
──不起訴理由を公表する法的な根拠はあるのでしょうか。
法律上、不起訴理由をどのような場合に開示することができるかを明確に定めた規定はありません。
開示する法的根拠として参考になるものの一つとして、刑事訴訟法47条のただし書があげられます。
「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない」
この条文は、あくまで「訴訟に関する書類」について規定したものですが、例外的に開示する必要性、相当性があるかどうかは、検察庁の裁量に委ねられており、個別の事案に応じて判断されます。
不起訴理由の開示についても、検察庁の裁量に委ねられているとみることができるでしょう。

