検察が「不起訴の理由」公表へ舵、名誉回復どころか逆効果?元検事が「法的リスク」と「憶測の拡大」指摘

検察が「不起訴の理由」公表へ舵、名誉回復どころか逆効果?元検事が「法的リスク」と「憶測の拡大」指摘

●「世の中からの見え方」を気にした判断か

──元検事の立場として、今回の見直しをどう評価しますか。

不起訴理由を公表することによるリスクも多く、そのリスクを示した直近の裁判例もあるにもかかわらず、金沢地検の動きがあった数日後に、最高検が唐突に今回の方針を決めたというのは、いささか「『世の中からの見え方』を気にした性急な判断であったのではないか」と思わざるを得ません。

公表について積極的に検討すること自体は良いかと思いますが、本人の名誉回復のために積極的に公表した結果、本人の名誉を毀損することになってしまうのは本末転倒ですので、少なくとも「本人の同意」を得ることを条件にするなど、運用の仕方や必要な手続きなどの制度設計も含め慎重に検討する必要があるのではないでしょうか。

そうでなければ、元検事の感覚としては、現場でどのような場合に公表するべきか判断に迷いが生まれ、結局、地検によってはこれまでどおり公表を控えるといった対応になってしまい、最高検が「上から言っているだけ」という温度差が生まれた状態になってしまうおそれもあるかと思います。

●最高検「協議や検討について、有無を含めてお答えできない」

今回の運用見直しについて、弁護士ドットコムニュースが最高検に問い合わせたところ、以下の回答があった。

検察部内における協議や検討については、原則非公表としているところであり、その有無も含めてお答えできない。

いずれにしても、不起訴処分広報については、個別の事案ごとに、公表の公益上の必要性や弊害等を考慮し、具体的在り方を検討する必要があると考えており、今後も適切な広報に努めてまいりたい。

【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:https://rei-law.com/

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