●東京地裁「暗証番号変更予告は不法行為にあたる」
東京地裁は11月27日、大家側が求めた賃料増額請求について、夫婦が応じた18万8000円を超えて賃料を増額する理由は認められないとして、大家側の請求を棄却した。
また、夫婦が駐車場の賃料増額に同意したとも認められないとして、管理会社が無断で引き落とした1万1000円の返還を大家に命じた。
さらに、駐車場の賃貸借契約を解約するとして、暗証番号を変えることを予告したことは、法的手続きによらずに実力で夫婦の駐車場の占有や使用を排除するものとして、不法行為の成立を認めた。
そのうえで、駐車場の妨害禁止の仮処分命令などにかかる弁護士費用にあたる計12万円の支払いを大家側に命じた。一方、夫婦側が求めていた精神的苦痛に対する慰謝料の支払いは認めなかった。
「駐車場の賃貸借契約を解約したとして、解約日に暗証番号を変える旨を被告に予告する本件通知を送付しているところ、このように法的手続を経ることなく実力で被告の本件駐車場の占有・使用を排除しようとすることは、違法に被告の権利・利益を侵害するものとして不法行為が成立することは明らか」(判決文)
●夫婦側の代理人「強引なやりかたに歯止めをかける判決だ」
妻と代理人が12月3日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。
代理人の秋山直人弁護士によると、今回の値上げ通知でも主張されたように、地価上昇を理由として急激な賃料増額を求められるケースが増えているという。
秋山弁護士によれば、賃貸マンションであれば、簡単に借主を追い出すことはできないが、借地借家法の適用がないとされる駐車場の賃貸借契約の解約を「部屋の賃料増額の交渉」に使うケースもみられるそうだ。
「今回の事案は、駐車場の解約にとどまらず、あと1カ月で機械式駐車場の暗証番号を変えるので、車両を撤去しなければ閉じ込められ、車を使うことができなくなると、実力行使を予告したものです。
地価や物価上昇で賃料を上げたい気持ちはわかりますが、裁判所は、こうした自力救済の予告を不法行為と認めました。損害賠償が命じられたことは、このような賃貸人の強引なやりかたに歯止めをかけるものとして重要な意義があると考えます」

