猫は歯の病気にかかりやすい動物。猫に多く見られる口内の病気について正しく理解し、予防や早期発見・治療に努めましょう。
今回は、猫に多く見られる3つの口内トラブルについて、獣医師の藤田桂一先生に解説していただきます。

歯周病とは、歯肉炎と歯周炎の総称で、歯の周囲の組織(歯肉、歯根膜、歯肉粘膜など)が炎症を起こし、進行すると歯を支える歯槽骨(しそうこつ)まで破壊されてしまう病気です。
歯に付着した歯垢や歯石の中に潜む細菌が原因で、悪化すると歯が抜け落ちるほか、口腔内の細菌が血流にのって全身に広がり、悪影響を及ぼすおそれも。とくに近年注目されているのが、慢性腎臓病との関係です。歯周病関連の細菌が血流にのって腎臓に届くと、炎症を引き起こし機能低下を招くことが判明しました。歯周病は猫がかかりやすい慢性腎臓病のリスクを高める可能性があるといえます。
なお、歯周病は2~3才以上の猫の80%以上が罹患しているといわれ、気付いたときには重症になっているケースも珍しくありません。
中程度の歯周病の症例

臼歯(奥歯)に大量の歯石が付着し、歯肉が赤く腫れています。とくに歯と歯肉の境目で炎症が進行し、歯肉が後退しています。
歯石になるスピードは人の3倍 歯磨きで予防を
猫は歯垢が歯に付着して数時間後には歯肉に炎症が起こり、約1週間で歯石になることが報告されています。このスピードは、人のおよそ3倍。猫の歯周病の予防には、毎日の歯磨きが不可欠です。また、歯磨きを習慣化すれば、歯周病の早期発見・治療が可能になり、重症化を防げるでしょう。
猫に多く見られる口内トラブル(2)歯肉口内炎
人の口内炎は数日で自然に治ることが多いですが、猫の口内炎は重症化しやすい病気です。
ほとんどのケースで口内粘膜と歯肉の両方に炎症が見られるため、「歯肉口内炎」と呼ばれ、強い痛みを伴う炎症が口の奥まで広がって、食事や水を取るのも難しくなるほど悪化する場合も。
また、炎症が慢性化し完治が難しくなりやすい病気で、原因はよくわかっていませんが、猫自身の免疫システムの異常や、ウイルス・細菌が関係していると考えられています。
