当事者の視点「共学は怖い、女性として安心して学びたい」
一方で、なぜトランスジェンダーの学生は、あえて「女子大」を志望するのでしょうか。そこには当事者なりの切実な理由があります。
一つは、共学環境での「生きづらさ」です。男性が多い環境や共学では、トランスジェンダーであることで奇異な目で見られたり、ハラスメントを受けたりするリスクを感じる人が少なくありません。
「女性」として扱われ、ジェンダーによる差別を受けにくい女子大こそが、安心して学べる「セーフティースペース」だと感じていることが選ぶ理由として考えられます。
また、女子大が歴史的に見た場合、「社会的に弱い立場にある女性の教育」を担ってきたことから、「トランスジェンダー女性もまた、現代社会で弱い立場にある『女性』であり、女子大が受け入れるべき対象だ」という考え方もあります。
互いに求める「安全」が衝突する悲劇
この問題の難しさは、双方が求めているものが、実は同じ「安全と安心」である点ではないでしょうか。
既存の学生の一部は、身体的男性がいないことによる「安心」が揺らぐことへの懸念を感じています。一方の、トランスジェンダー学生は、女性として受け入れられることによる「安心」への渇望があるのです。
一方が安心を求めれば、もう一方の安心が脅かされると感じてしまう――。
「共学に行けばいい」という意見は一見論理的に見えますが、当事者にとっては「共学こそが恐怖の場所」であるというジレンマ。そして、なし崩し的な変化に不安を抱く在学生たち。
単純な「賛成・反対」では片付けられない、深い課題がそこには横たわっているように感じます。
(足立むさし)

