東城さんが、佐藤家へ執拗に干渉し始める。嫌味や監視行動が続き、子どもたちまで怯えるように。近所の家族が追い詰められて引っ越した過去も重なり、みのりは恐怖と葛藤につきまとわれていた。
不安が日常を侵食していく
東城さんの視線が、私たちの日常にべったりと張り付くようになってから、子どもたちは夜に何度も目を覚ますようになった。「窓の外に誰かいる気がする」と泣きながら私の腕にしがみつく小さな手の震えを感じる度、胸がぎゅっと締め付けられる。
私が「覗かないでください」と言った後も、東城さんは監視をやめるどころか、より積極的に家の周囲をウロウロするようになった。 庭先の花に水をあげているふりをしながら、こちらをじっと監視する。ゴミ捨てに出れば、いつの間にか後ろに立っている。
「みのり、何かあった?」
その夜、リビングで夫の大智が真剣な目で私を見つめた。 表情には不安と怒りが入り混じっていた。
「……実は、東城さんが…」
最近の東城さんについて話すと、夫は冷静にこういった。
「防犯カメラ、つけよう。その人、完全に一線越えてる」
その言葉に、私は中村さんの顔を思い出す。 私もカメラをつけて、中村さんみたいなことを言われたらどうしよう。夫に不安を吐露すると、夫はまゆをひそめてこう言う。
「みのりが嫌がってる理由はわかるよ。でも、子どもたちもいるんだから俺たちが守らないと…」
大智が言いかけたところで、娘が泣き声をあげた。 すぐに寝室へ向かい、子どもの背中をさする。
「こわい…ママ…」
その言葉を聞き、私はやはりカメラを置かねばならないと思った。子どもの恐怖心を、できるだけ早くゼロにしてあげたい。
守るための決断
買い物に行っても、心は重たいまま。ふと視線を感じて振り返ると、すぐそばに東城さんがいたらどうしようと意識してしまう。
「……どうすればいいの」
カートの取っ手を握る手に力が入る。出口が見えず、ただ不安だけが膨れ続ける。そんな時だった。スーパーの掲示板に、チラシが貼られていた。
―――地域安全パトロール強化月間。
そうだ。東城さんがしていることは明らかなプライバシーの侵害だからこそ、ちゃんと証拠を残してしかるべき場所に相談しなくては。私はスマホを握りしめ、大智にメッセージを送った。
「カメラ、つけよう」
すぐに返ってきた返信。
「オーケー。絶対、家を守ろう」
画面の文字が滲んだ。けれど、その涙は少しだけ温かい気がした。

