始まった静かな闘い
週末、大智と一緒にホームセンターへ行き、スマートタイプの防犯カメラを購入した。 配線も工事も不要で、スマホで映像確認できる優れもの。震える心を押さえつけながら、「これで大丈夫」と自分に言い聞かせる。
設置位置を相談しながら脚立に上る大智を、私は支えていた。
「よし、これでOK」
大智が腕を伸ばして固定し終えたところで声がした。
「あら、監視カメラ?佐藤さんも色々と…大変ねぇ」
振り向くと、案の定、東城さんが塀の向こうに立っていた。
「知らないうちに誰が家に入っているかわからないし、妻って不安になるものよね?」
その言い方は、ただの世間話のように柔らかい。それなのに、面にかけられた薄氷のように危うくて、冷たい。大智が小さく舌打ちした。
「今のって、どういう意味ですか?」
低く、抑えた声。いつも穏やかな彼が怒っているのがわかる。
「まあ、ご主人怖~い。佐藤さんはいい旦那さんがいていいわね~」
東城さんは意味ありげに笑うと、踵を返して去っていった。私はその姿を、一歩も引かずに見送った。胸の奥に、小さくても確かな炎が灯っていた。嫌味を言われた。また噂を流されるかもしれない。挑発はこれからもっと激しくなるだろう。それでも私は、絶対負けない。
自分の家の方に歩いて行った東城さんの視線が、またこちらに向けられているのを感じる。でも、今日は怖くない。私たちの家は、もう無防備じゃない。ここには、家族を守ろうとする意志があるから―――。
あとがき:恐れが生んだ一歩
恐怖は、私たちから勇気を奪うだけの存在ではない。守りたいものがあるからこそ、震える膝のまま前に踏み出せる──今回のみのりは、まさにその瞬間にいました。東城さんの存在は依然脅威であり、闘いはこれからが本番です。
それでも、家族の背中に寄り添い、諦めずに向き合おうとする一歩は、小さな炎となって確かに灯りました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

