今回の釣行、そして今シーズンのまとめ。
この釣行の翌日から渓は閉じられるが、思えば今季は大きさにおいても、ゴギを始めて掛けたということにおいてもサイコーの年であった。それぞれの魚たちが野生そのものとしての一瞬を存分に見せてくれた、そしてそのたった一匹の野生に救われて、老いて屈託していた心がどんなにかのびのびと解かれたことであろうか。
フライを仲立ちにして渓と人が交わる、人生の黄昏に立って、こんな幸せなことが他にあるだろうか。
九州のエノハ、そしてヤマメとアマゴ。
九州では、ヤマメやアマゴの総称としてエノハという言葉を使うことがある。姿が榎の葉に似ているからである。
アマゴについて、九州では本来周防灘に流れる河川に棲む魚であり、大分県の大分川、大野川、山国川の漁協も本来にのっとってアマゴのみの放流を行っている。釣った魚にヤマメが混じるのは、アマゴが手に入らなかった頃の代替放流であったヤマメの生き残りか、あるいは何かの事情で混入したのではないかと漁協の関係者は語っていた。
福岡県はどこもヤマメのみを放流している。今回の記事のように豊前でアマゴが釣れたなら、それはネイティブの可能性が高いと豊前の漁協氏は言う。だとするなら、アマゴがヤマメと別れて120万年!今回のアマゴは代々川が分泌するものだけを食べて生をしのぎ、この日この瞬間、私のフライと出会ったということになる。純潔なアマゴの影に様々意外なものを秘めているらしく感じられたのはその壮大なロマンのせいであろうか。

