
監修医師:
松井 信平(医師)
慶應義塾大学医学部卒業、慶應大学関連病院での修練後、慶應大学のスタッフへ就任、2023年4月よりがん研有明病院スタッフ勤務。専門は消化器外科・大腸がん。
腹膜偽粘液腫の概要
腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)は、腹腔内に粘液性の腹水や腫瘤が蓄積する腫瘍性疾患です。発症頻度は低く、100万人に1〜2人の割合で発症します。男女比は1:3で女性に多くみられます。(出典:難病情報センター「消化器系疾患分野|腹膜偽粘液腫(平成23年度)」)
腹膜偽粘液腫は、粘液をつくる腫瘍細胞が、主に虫垂や卵巣から発生し、粘液と腫瘍細胞が腹腔内に広がっていきます。進行が遅い場合も多くありますが、徐々に進行します。
症状としては、腹部の膨隆、呼吸困難、鼠径ヘルニア、虫垂炎の症状、腹水の所見などが挙げられます。しかし、初期段階では特徴的な症状が現れにくい場合が多く、発見が遅れることがあります。
腹膜偽粘液腫の診断は、複数の検査を組み合わせて行われます。主に、腹部CT検査やMRI検査により、腹腔内の粘液の蓄積や腫瘍の存在と位置、大きさを確認します。血液の腫瘍マーカー検査によってCEAやCA19-9などの項目も確かめます。
腹膜偽粘液腫は、腫瘍細胞について良性から悪性までさまざまな段階があり、進行度や病理学的特徴によって治療方針が決定されます。患者の生活の質を維持しながら、疾患の進行を抑制することが治療の主な目標となります。現状は、腫瘍切除と腹腔内温熱化学療法(HIPEC)の組み合わせが効果的とされています。

腹膜偽粘液腫の原因
腹膜偽粘液腫発症のはっきりした原因は分かっていませんが、虫垂にできた粘液嚢胞腺癌や粘液嚢胞腺腫の進行や破裂が要因の一つであると考えられています。悪性の腹膜偽粘液腫では、上皮増殖因子受容体(EGF受容体)が癌細胞に多く発現していることがわかっています。

