網膜症の前兆や初期症状について
網膜症は初期だけでなく、ある程度進行した段階でも自覚症状には乏しいことが知られています。したがって、網膜症の前兆や初期症状に気がつけるかどうかは、定期的あるいは早めに検査を受けられたかどうかによる部分があります。
病状が進行し、黄斑浮腫(おうはんふしゅ)、硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)、牽引性網膜剥離(けんいんせいもうまくはくり)などが出現した際に、はじめて症状を自覚するケースも見られます。
以下に、網膜症が進行することで併発しやすい疾患を紹介します。
黄斑浮腫
網膜症により毛細血管の壁が傷つき水分が漏れ出すと、網膜にある黄斑(視力に最も大切な錐体細胞が集まった部位)にむくみや水ぶくれを生じることがあります。これを黄斑浮腫と呼び、視力低下や、物がかすんだりゆがんで見えたりする症状を引き起こします。
硝子体出血
網膜症が進行すると、正常に機能しなくなった毛細血管の働きを補うために、新生血管という新たな血管状の組織が網膜上に作られます。新生血管は異常に発達した組織であり非常にもろい性質を持つため、容易に出血します。その出血による血液が、網膜に隣接する硝子体(眼球の体積の大半を占める透明な組織)に流れ込んでしまった状態が、硝子体出血です。
軽度の硝子体出血は自覚症状なしに繰り返され、さらに新生血管を増やす悪循環となる場合もあります。また、出血量が多くなると突然視界の一部が曇ったり、遮られたりする症状が出ます。
牽引性網膜剥離
網膜周辺の毛細血管の異常や新生血管の増加、あるいは出血などを繰り返していると、網膜の周辺に増殖膜というかさぶたのような組織が発達してしまいます。さらにその増殖膜によって網膜が引っ張られたり、押し上げられたりする力が働き、網膜が剥がれかけてしまう状態が牽引性網膜剥離です。牽引性網膜剥離は放置すると短期間で失明に至る可能性のある危険な状態です。
網膜症の検査・診断
網膜症の診断ではいくつかの検査があります。糖尿病の病歴や患者の状態に合わせ、医師の判断でおこなわれます。主な検査を以下に紹介します。
視力検査
裸眼視力や矯正視力を測定し、視力に異常がないか検査します。
眼底検査
眼底検査は、眼底にある網膜や血管、視神経の状態を直接的に観察する検査です。網膜症の診断においてもっとも基本となる検査です。出血や新生血管の有無、網膜剥離の有無がわかります。
眼圧検査
眼圧検査は、目に一瞬風を吹き付けて眼の硬さ(眼圧)を測定する検査です。空気を目に吹き付けると角膜がへこむため、このへこみ具合で眼圧を調べることができます。新生血管がある場合は眼圧が高くなります。
細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査)
糖尿病患者は網膜症だけでなく、角・結膜障害やぶどう膜炎、白内障、血管新生緑内障など、他の眼球の異常を併発していることもあります。そのため細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)で角膜、結膜、房水、虹彩、隅角、水晶体、硝子体などをくわしく観察します。
光干渉断層計(OCT)
網膜の断層像を得る画像検査です。黄斑部付近の網膜に浮腫があるかなどを観察します。

