「胸元がはだけたAI画像」拡散にあいみょんが「きもすぎ」と不快感 法的責任は問える?

「胸元がはだけたAI画像」拡散にあいみょんが「きもすぎ」と不快感 法的責任は問える?

シンガー・ソングライターのあいみょんさんが12月2日、生成AIで加工したと思われる自身の画像がネット上で拡散されていることに「きもすぎ」とX上で不快感を示しました。

拡散されている画像は、路上に座っているあいみょんさんが胸元の見える構図の画像だった。

あいみょんさんはXに、「私が乳出してるみたいな画像めっちゃ出回ってるけどAIやで、きもすぎ」と画像がフェイクであると注意を促しました。

AIで生成された画像が拡散されるケースは増えていますが、今回のケースで投稿者に何らかの法的責任を追及することができるのでしょうか。

●AI生成画像を拡散する行為は「肖像権侵害」にあたる可能性

このようなAI生成画像を拡散する行為は「肖像権侵害」にあたる可能性が高く、民事上の損害賠償請求の対象となり得ます。

肖像権について、最高裁平成17年(2005年)11月10日は「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」としており、また、「自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有する」としています。

この2つ、つまり1)撮影されない利益、2)撮影された写真をみだりに公表されない利益を肖像権とよんでいます。

本件では、拡散されている画像は、あいみょんさんを知っている人が見れば、本人だと認識するであろうAI生成画像であり、あたかも本人が(露出の多い)姿を公表しているかのように受け取られかねません。

そのため、本人の意図に反してその姿態が公表されていると評価でき、肖像権を侵害していると考えられます。肖像権が侵害された場合、あいみょんさんは画像を作成・投稿した人や、拡散した人に対して、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることができると考えられます。

●「ディープフェイクポルノ」や「名誉毀損罪」としての処罰は難しい

「AIを使って、特定の人の画像を性的なものに加工する」ということで、本件画像がディープフェイクポルノとして処罰されないか気になる方も多いかと思います。

しかし、先にみたように、本件の画像は露出が多いものの、ディープフェイク「ポルノ」とまでは言えないと考えられるため、これを処罰することは難しいでしょう。

なお、仮にディープフェイクポルノにあたるとしても、日本ではこれを処罰する規定がほとんどないのが現状です。

たとえば、鳥取県では、2025年8月から、未成年のディープフェイクポルノについて作成や提供まで含めた罰則を科す条例が施行されていますが、それ以外に作成や提供まで含めてディープフェイクポルノを特別に処罰する規定はありません。

ただし、事情によっては既存の罰則で処罰できる可能性はあります。2025年10月には、実在する女性芸能人につき、生成AIを用いてニセのわいせつ画像を作成してインターネット上に公開した男性が、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪(刑法175条、2年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金など)容疑で逮捕されています。

繰り返しになりますが、今回のあいみょんさんの画像は、最初にみたとおりディープフェイク「ポルノ」といえないと考えられるため、こういった規定で処罰することは難しいと考えられます。

次に、刑法上の「名誉毀損罪」(刑法230条)の成立については、その画像があいみょんさんの社会的評価を下げるような「事実の摘示」にあたるかどうかが問題となります。

本件で拡散されている画像は、露出が多いものの、「ポルノ」とまでは言えないでしょう。そのため、「露出の多い服を着ている」という印象を与えるにとどまり、これをもって「性的な姿態をみだりに公開するような人である」といった、社会的信用を下げるような事実を摘示しているとはいえない可能性が高いでしょう。

ただし、完全に裸の画像を生成・拡散したような場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があることには注意すべきです。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

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