ジビエの利活用の課題
しかし、ジビエの利活用には、大きく3つ課題が存在するとのこと。
1つ目が「安全性」だ。野生鳥獣は、菌やウイルス、寄生虫などさまざまな病原体を保有している可能性があるため、衛生面の整った認証施設において正しく処理し、調理の際も適切に加熱する必要がある。
2つ目の課題は「流通と保管」。もともと食肉用ではなく、農作物の鳥獣被害対策として捕獲されるため、安定的な需給計画を立てることが難しいという問題があるそう。個体差も大きい上、保管には冷凍設備も必要とされるため、レストラン等でメニューとして加えることが困難なことが、ジビエ利用のハードルとなっている。
3つ目の課題は「手間」。安全性や衛生面から、適切な処理や加熱によってしっかりと殺菌を行う必要性があるため、ジビエ調理には専門的な知見を有することが推奨されており、スネ肉や首肉などの部位は、肉を柔らかくするために長時間煮込む必要があるなど、提供側の労力がかかることも利活用の妨げになっているという。
レトルト技術を応用したジビエ缶詰

今回販売が始まった、「Confit de chevreuil~柑橘香る鹿肉と大豆のコンフィ~」「CERVO ALLA CACCIATORA~鹿肉とトマトの猟師風煮込み~」「鹿肉の清酒煮~出汁と鹿肉の風味を活かした肴~」がセットになった「長野のジビエ三種缶」は、レトルト技術を応用した商品。

加圧加熱殺菌を用いたレトルト技術を応用することで、菌やウイルスを死滅させてジビエを安全に食べられるようにするだけでなく、食材を常温で長期保存可能にしてる。
これは、捕獲のタイミングが不安定なジビエ肉の需給を安定させることにも寄与。加熱済みのため開封してすぐに食べられるほか、調理の際は最後に焼き目を入れる、混ぜるといった仕上げだけで、調理が完了させることができる。
調理の技術も包装容器の技術も、食べ物をより安全においしく食べられるように発展してきた技術。昨今の鳥獣被害の先にある、ジビエの利活用は、捨てられているから食べようという日本の“モッタイナイ精神”にとどまらず、高タンパク低カロリーな食料資源として栄養の観点からも重要だ。
今後は、製品開発にとどまらず、ジビエの安全性や流通、手間といった課題の解決に向けて、レトルト技術を活かした新たな仕組みを構築すべく、東洋製罐グループホールディングス、辻󠄀調理師専門学校、日本ジビエ振興協会は三者での共創を進めていくとしている。
レトルトでジビエの可能性を引き出す「+GIBIERプロジェクト」から誕生した、ジビエ缶詰をチェックしてみては。
Makuake:https://www.makuake.com/
プロジェクト名:一流が辿り着いた究極のジビエ調理法【長野のジビエ三種缶】
※1 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和5年度)」:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html
※2 プロジェクト第1弾は“長期保存できる本格料理”(2024年9月24日付プレスリリース):https://www.tskg-hd.com/news/detail/20240924_newsrelease.html
(佐藤ゆり)
