
【ストーリー】
対テロ特殊部隊の若き隊員アムリト(ラクシャ)が、演習先で恋人トゥリカ(ターニャ・マニクタラ)からのメッセージを受信する。トゥリカの父親である大物実業家タークル(ハーシュ・チャヤ)が、強引に彼女の見合い相手を決めてしまい、明日その婚約式が行われるというのだ。
アムリトは身分違いのトゥリカとの交際を秘密にしてきたが、二人は心から愛し合っている。部隊の同僚で親友のヴィレシュ(アビシェク・チョーハン)を伴い、トゥリカのもとに向かったアムリトは、ラーンチー発ニューデリー行きの特急寝台列車の車内で、彼女に指輪を捧げてプロポーズするのだった。
ところがその夜、列車内に密かにまぎれ込んでいた武装強盗団が動き出す。ファニ(ラガヴ・ジュヤル)をリーダーとする総勢40人の一族が、刀を振りかざして乗客たちを襲い始めたのだ。
特定の車両を狙って根こそぎ金品を奪う一族の計画は30分で済むはずだったが、強欲なファニは大富豪のタークルとその娘トゥリカに目をつけ、身代金目的の誘拐をもくろむのだった…。

■本作が映画デビューとなる俳優が、軍事戦闘訓練を受けて本格アクションに挑戦!
本作のメガホンをとったニキル・ナゲシュ・バート監督は、インド映画界で20年以上活躍してきた経験豊富なフィルムメーカーとして知られている。実は本作、監督自身が大学時代に利用した長距離列車が強盗団の襲撃を受けた実体験を基に構想したという。
そんなニキル監督とタッグを組んだのは、これまでドラマを中心に活躍し、本作で映画デビューを飾った俳優ラクシャ。強盗団と死闘を繰り広げる主人公を全力で演じた彼は数々の賞を獲得し、新たなアクション・ヒーローとして注目を集めた。

ラクシャと、主人公アムリトの親友ヴィレシュを演じたアビシェーク・チャウハンは、インド国家治安警備隊(NSG)の特殊部隊隊員を演じるために特別なトレーニングを受けたという。イスラエルで考案された近接格闘術“クラヴマガ”や、フィリピンの近接格闘術“ペキティ・ティルシア・カリ”などの軍事戦闘訓練を受けて撮影に挑んだ二人。
最初は大人しく列車に乗っていたアムリトとヴィレシュが、強盗団が動き出してからは特殊部隊隊員らしいキレッキレのアクションを披露。この二人の絆が描かれているところも見どころの一つとなっている。

武装強盗団のリーダーであるファニを演じたのは、インドのウッタラーカンド州にある山麓出身のダンサー兼俳優ラガヴ・ジュヤル。最近では映画『Kisi Ka Bhai Kisi Ki Jaan』(2023年)で、ボリウッドのスーパースターとして知られるサルマン・カーンと共演を果たした。ラガヴは、強盗団のほかのメンバーを演じる俳優たちとともに、ストリート・ファイターのような戦い方を教え込まれたという話も。
ファニは見た目はそんなに怖くないが、一度暴れ出したら誰も止められないヤバすぎる男。彼の極悪非道っぷりを見て最初は怖くて震えたが、一族を背負うリーダーだからなのか、仲間の前でやたらとイキる姿には思わず笑ってしまった。とにかく1ミリも共感できない超嫌な奴を演じたラガヴに拍手を送りたい。


アムリトの恋人トゥリカを演じたのは、舞台や映画、ドラマなど幅広く活躍する俳優ターニャ・マニクタラ。美しく凛としたトゥリカは、ファニに乱暴な絡み方をされても怯んだりしない。怖いもの知らずのトゥリカが、強盗団のメンバーに強気な態度を見せるたびにハラハラさせられるが、彼女のかっこいい姿には惚れ惚れした。


■主人公の“覚醒”後に壮絶な殺し合いがスタート、前代未聞のバイオレンスシーンに度肝を抜かれる!
インド映画といえば群衆でのダンスシーンやド派手なアクションシーンを想像する人も多いだろう。だが本作はバイオレンスアクションを見せることにこだわり、闘い方もスタイリッシュというよりは泥臭いのが特徴だ。
映画祭などで本作を鑑賞した人たちからは「インドで作られた最も暴力的な映画」という声が上がり、『ジョン・ウィック』シリーズを手がけたチャド・スタエルスキ監督は「『KILL 超覚醒』は最近観た中で最も躍動的でワイルド、そしてクリエイティブなアクション映画だ」とコメントしている。

特殊部隊に所属する主人公アムリトが駆使するのは、イスラエルの“クラヴマガ”とフィリピンの“ペキティ・ティルシア・カリ”をベースにした近接格闘術。対する強盗団の面々は、ストリートで培った荒々しいケンカ殺法で四方八方からアムリトに襲いかかってくる。
無用な殺しを避けようとしていた純朴な青年アムリトが、中盤に起こるショッキングな出来事をきっかけに覚醒。群がる敵を次々と血祭りに上げていく彼のクレイジーな姿にテンションが上がること間違いなし!


劇中で強盗団が使う武器は主にナイフで、52種類ものナイフが撮影用に用意されたという。列車の中で繰り広げられる接近戦だからこそ、ナイフを使ったアクションシーンはリアリティがあり、どんどん傷が増えていくアムリトの姿はとても痛々しい。
これまで数々のアクション映画を鑑賞してきたが、本作は今までに見たことのないバイオレンスシーンが満載で度肝を抜かれた。アムリトが敵を容赦なく倒していく姿にスカッとできる本作。ぜひ劇場の大きなスクリーンで鑑賞してもらいたい。



文=奥村百恵
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