「虫垂炎」を発症すると「どこにどんな痛み」を感じる?【医師監修】

「虫垂炎」を発症すると「どこにどんな痛み」を感じる?【医師監修】

虫垂炎は、いわゆる盲腸と呼ばれることもある病気で、大腸のはじまり部分にある虫垂に炎症が起こった状態です。救急外来を受診する腹痛のなかでもよくみられる病気の一つであり、適切なタイミングで治療すれば予後のよい病気とされています。

一方で、痛みの出方や場所には個人差があり、初期には胃腸炎などと区別がつきにくい場合があります。痛みが強くなってから受診すると、虫垂が破れて腹膜炎を起こすなど、命に関わる状態に進んでしまうこともあります。

この記事では、虫垂炎の痛みの特徴や進み方、痛みがあるときの受診の目安や治療後の痛みについて解説します。

高宮 新之介

監修医師:
高宮 新之介(医師)

昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院生理学講座生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

虫垂炎の痛みの特徴

虫垂炎の痛みの特徴

虫垂炎では必ず腹痛がありますか?

虫垂炎の代表的な症状は腹痛で、ほとんどの患者さんで何らかの腹痛がみられます。
ただし、高齢の方や糖尿病、免疫を抑える薬を使っている方などでは、痛みが弱かったり、場所がはっきりしなかったりする場合があります。まったく痛みを感じない虫垂炎は大変まれですが、痛みが軽いから虫垂炎ではないと自己判断することは危険です。

腹痛に加えて、食欲が落ちる、気持ちが悪い、微熱が続くといった変化もヒントになります。お腹の痛みが数時間以上続いているときは、自己判断せず医療機関で評価を受けましょう。

虫垂炎の痛みの特徴を教えてください

典型的な虫垂炎の痛みは、最初はみぞおちやおへその周りに出る鈍い痛みから始まり、その後、右下腹部に移動して局所的で強い痛みになると説明されています。

初期はお腹の真ん中あたりが重い、しくしくする、といったはっきりしない痛みですが、炎症が進むと虫垂のある右下腹部の一点に、刺すような痛みとして感じられることが多いです。

歩いたり、走ったり、咳やくしゃみをしたり、車の揺れでお腹が揺れると痛みが強くなるのも虫垂炎にみられやすい特徴です。右下腹部を押したときや、押した手を離したときに痛みが強くなる場合は、炎症が進んでいる可能性があります。ただし、こうした典型的な経過をたどらない虫垂炎もあるため、痛みの出方だけで安心しないことが大切です。

虫垂炎の痛みは胃腸炎や胃炎の痛みとは異なりますか?

胃腸炎では、お腹全体の痛みや差し込むような痛みに加えて、下痢や嘔吐が目立つことが多いとされています。

胃炎では、みぞおち付近の痛みや焼けるような感じ、食後に痛みが悪化しやすいといった症状が中心になる傾向があります。

虫垂炎では、初めはお腹の中央付近の痛みから始まり、その後、右下腹部に痛みが集まっていくことが典型的です。また、歩いたときや咳をしたときに右下腹部の痛みが強くなるのも特徴です。

ただし、胃腸炎や胃炎でも右下腹部に痛みを感じる場合があり、症状だけで完全に区別することはできません。腹痛が続く、悪化していく、発熱を伴うといった場合には、医師による診察が必要です。

虫垂炎の痛みかどうかを確かめる方法を教えてください

自宅でお腹を押してみるだけで、虫垂炎かどうかを正確に見分けることはできません。医療機関では、痛みがいつから、どの部位に、どのような性質で出ているかを丁寧にうかがい、身体診察や検査を組み合わせて診断します。

診察では、右下腹部を押したときの痛みや、押した手を離したときの痛み、腹筋が無意識に硬くなるかどうかなどを確認します。さらに、血液検査で白血球やCRPなどの炎症反応を調べ、必要に応じて超音波検査やCT検査で虫垂の腫れや周囲の炎症を確認します。妊婦さんや若い方では、放射線被曝の影響を考慮して、超音波検査やMRIを優先することがあります。

痛みが強いときに自分で繰り返し強く押したり揉んだりすると、かえって症状を悪化させるおそれがあるため避けてください。

虫垂炎の痛みの進み方

虫垂炎の痛みの進み方

虫垂炎の痛みは進行にしたがって変化しますか?

虫垂炎の痛みは、炎症が進むにつれて変化していくことが多いです。初期にはお腹の中央付近の鈍い痛みから始まり、その後、虫垂のある右下腹部に痛みが移動して、局所的で鋭い痛みになっていくとされています。

炎症が強くなると、右下腹部を押したときだけでなく、押した手を離したときにも強い痛みを感じるようになります。また、歩く、立ち上がる、咳をするなどの動作で痛みが増し、寝返りもつらくなることがあります。

さらに進行して腹膜炎という状態になると、お腹全体が板のように硬くなり、軽く触れただけでも激しい痛みを感じます。この段階では緊急の治療が必要になるため、痛みが強まる、広がる、動けないほど痛いといった変化があれば、早急に受診することが重要です。

虫垂炎の痛み以外の症状の変化を教えてください

虫垂炎では、痛み以外にもさまざまな症状の変化がみられます。初期には、食欲低下や軽い吐き気、37度台の微熱など、かぜに似た症状から始まることもあります。炎症が進むと、38度前後の発熱や強い吐き気、嘔吐、全身の強いだるさなどが目立ってきます。

血液検査では白血球数の増加やCRPの上昇といった炎症反応が強くなる傾向があります。虫垂が破れて腹膜炎を起こすと、意識がもうろうとする、脈が速くなる、冷や汗が出るなど全身の状態が急速に悪化することもあります。このような状態は命に関わる危険なサインのため、救急の対応が必要です。

虫垂炎が治っていないのに痛みが消えることはありますか?

虫垂炎が治っていないにもかかわらず、一時的に痛みが弱く感じられる場合があります。代表的なのは、虫垂の中の圧力が高まり、虫垂が破れて中身がお腹の中に広がった直後です。このときは一時的にお腹の張りや圧迫感が軽くなり、痛みが和らいだように感じることがありますが、その後、お腹全体の激しい痛みや高い発熱に変わることが多いとされています。

また、抗菌薬の点滴や内服で炎症が一時的に落ち着き、痛みが軽くなることもありますが、炎症が残っていれば再び悪化する可能性があります。痛みが軽くなったからといって通院を中止したり自己判断で薬をやめたりするのではなく、症状の変化に関わらず、主治医の指示に従って経過を確認してもらうことが大切です。

配信元: Medical DOC

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