子どもがしもやけになりやすいみたい。大人と比べてなりやすいみたいだけど、なぜ?対策方法はある?そんな疑問について、たけうちファミリークリニック院長の竹内雄毅先生にお伺いしました。
冬の寒さが厳しくなると、お子さまの赤く腫れた指先や、痛々しいひび割れに心を痛める保護者の方も多いのではないでしょうか。子どもの皮膚はデリケートなため、冬の環境ダメージを受けやすく、「しもやけ」や「あかぎれ」は多くの子どもたちが経験する身近な皮膚トラブルです。
しかし、「たかが、しもやけ」と侮ってはいけません。適切なケアをしないと症状が悪化し、つらい痛みやかゆみで日常生活に支障をきたすこともあります。また、背景に別の病気が隠れている可能性もゼロではありません。
この記事では、小児科クリニック院長の立場から、科学的根拠に基づいたお子さまのしもやけ・あかぎれの原因、ご家庭でできる予防と対策、そして医療機関を受診するタイミングについて、分かりやすく解説します。

なぜ?子どもが「しもやけ」「あかぎれ」になりやすい理由
大人に比べて、なぜ子どもはしもやけやあかぎれになりやすいのでしょうか。それには、子どもの身体的な特徴が関係しています。
しもやけ(凍瘡:とうそう)は、寒さで血行が悪くなることが主な原因です。専門的には「凍瘡」と呼ばれ、気温が4〜5℃になり、一日の寒暖差が10℃以上になるような時期に発症しやすくなります。
私たちの身体は、寒さを感じると血管を収縮させて体温を維持しようとします。その後、暖かい場所へ移動すると血管は再び拡張しますが、この血管の収縮・拡張がうまくいかないと、血行障害が起こり、炎症やかゆみを引き起こします。これがしもやけの正体です。
子ども、特に痩せ型のお子さまは、体温を維持する脂肪が少なく、血管の働きも未熟なため、大人よりも血行障害を起こしやすい傾向にあります。
あかぎれ(皲裂:くんれつ)は、主に皮膚の乾燥とバリア機能の低下によって起こります。寒さや乾燥した空気は皮膚から水分と皮脂を奪い、皮膚の表面が硬くなってしまいます。その状態で指を曲げたりすると、皮膚が柔軟性を失っているため、亀裂が入ってしまうのです。
子どもは皮膚が薄く、皮脂の分泌量も少ないため、もともと皮膚のバリア機能が大人より弱いことも、あかぎれになりやすい一因です。
日常生活で取り組める!今日から始める予防ケア
つらい症状を防ぐためには、何よりも予防が大切です。ご家庭でできる効果的な予防法をご紹介します。
しもやけの予防法
しもやけ予防の基本は「保温」と「血行促進」です。
○防寒対策を徹底する:外出時には、手袋、厚手の靴下、耳当て、帽子などを活用し、肌が直接冷たい空気に触れるのを防ぎましょう。特に、汗で濡れると気化熱で体温が奪われるため、吸湿性と速乾性に優れた素材の下着を選ぶことも重要です。
○濡れたらすぐに拭く:雨や雪で手足が濡れた場合は、そのままにせず、すぐに乾いたタオルで優しく拭き取りましょう。
○締め付けない衣類を選ぶ:きつい靴や靴下は血行を妨げる原因になります。少し余裕のあるサイズを選びましょう。
○適度な運動:遊びやスポーツで体を動かすことは、全身の血行を良くするのに役立ちます。
○入浴で血行促進:ぬるめのお湯(38~40℃程度)にゆっくり浸かり、体の芯から温めましょう。入浴中に手足の指を優しくマッサージするのも効果的です。
あかぎれの予防法
あかぎれ予防の鍵は「保湿」です。
●こまめな保湿ケア:手洗いや入浴の後、外から帰ってきた後など、こまめに保湿剤を塗りましょう。特に、水分を拭き取った直後の、まだ少し湿り気が残っているうちに塗るのが最も効果的です。
●水仕事からの保護:水仕事をする際は、保護のためにゴム手袋などを着用する習慣をつけましょう。
●低刺激の洗浄料を選ぶ:洗浄力の強い石鹸は、皮膚に必要な皮脂まで洗い流してしまいます。低刺激で保湿成分の入った洗浄料を選びましょう。

もしなってしまったら?家庭でできる対処法
予防を心がけていても、しもやけやあかぎれになってしまうことはあります。その際の対処法を知っておきましょう。
◎しもやけの対処法:
基本は予防法と同じく、患部を温めて血行を促すことです。優しくマッサージをしたり、温かいお湯で温浴したりしましょう。かゆみが強い場合は、掻き壊してしまわないよう注意が必要です。市販のビタミンEやヘパリン類似物質が配合されたクリームも血行促進に役立ちます。
◎あかぎれの対処法:
まずは徹底した保湿です。保湿剤をこまめに塗り、皮膚を保護しましょう。ひび割れが深く、痛みを伴う場合は、傷を保護する「液体絆創膏」を使用するのも一つの方法です。ただし、傷口が開いている場合は刺激になることがあるため、注意書きをよく読んで使用してください。
こんな症状は病院へ!受診の目安
ほとんどのしもやけ・あかぎれはセルフケアで改善しますが、以下のような場合は医療機関(小児科または皮膚科)の受診をおすすめします。
・セルフケアを1〜2週間続けても症状が改善しない、または悪化する
・痛みが強く、歩行や日常生活に支障が出ている
・水ぶくれや潰瘍(皮膚がえぐれた状態)ができている
・傷口から膿が出る、熱を持っているなど、感染が疑われる
・毎年冬にひどい症状を繰り返す
病院では、症状に応じて血行を促進するビタミンEの飲み薬や、炎症を抑えるステロイドの塗り薬などが処方されます。
まとめ
お子さまのしもやけ・あかぎれは、冬のつらい皮膚トラブルですが、その原因とメカニズムを正しく理解し、日々の生活の中で少し工夫するだけで、十分に予防・改善することが可能です。
大切なのは、「保温」と「保湿」を基本としたていねいなスキンケアです。そして、症状が長引いたり悪化したりした際には、決して自己判断で抱え込まず、早めに医療機関に相談してください。
※本記事の作成にあたり、文章表現の確認や校閲の一部に生成AIを使用しております。
執筆者

竹内雄毅
医学博士・小児外科専門医。京都府精華町「たけうちファミリークリニック」院長。京都府立医科大学小児外科客員講師。
小児科・小児外科の診療に加えて、地域の子どもを安心して預けられる病児保育を運営し、さらに絵本の読み聞かせや離乳食教室、ベビーマッサージなどの子育てイベントも展開している。クリニックを「行きたくない場所」ではなく「行きたくなる場所」に変えることを目指し、医療を軸としたコミュニティデザインに力を注いでいる。現在は、隣接地に人が自然に集まり安心して交流できる広場の構想を進めており、家族と地域が互いに支え合える環境を形にしていこうとしている。

