10年ほど前のことです。ある日、空を見上げたとき、視界の中に黒い点が無数に現れるのに気づきました。まばたきをしても、目薬をさしても消えません。いわゆる“飛蚊症”のようでしたが、今回は以前よりもあきらかに数が多く、違和感がありました。念のために近所の眼科を受診することにしました。
「すぐに手術しないと失明します」と言われて
初めて訪れたその眼科で、医師から衝撃の言葉を告げられました。
「網膜剥離(もうまくはくり:眼球の奥にある網膜が本来くっついている位置から剥がれてしまう病気)になりかかっています。このままだと失明の危険があります。すぐにレーザーで網膜を固定する手術をおこないましょう」
あまりに突然の診断に、信じられない思いで固まりました。やぶ医者ではないか、だまされているのではないか……そんな不安がよぎり、慌ててスマートフォンで調べ始めました。加齢によって網膜が剥離しやすくなること、飛蚊症がその兆候である場合もあること、そしてレーザー手術が有効な治療法の1つであることを知りました。
しかし、さらに詳しく調べようとしたそのとき、「手術のために瞳孔を開きますね」と言われ、目薬をさされたのです。みるみるうちに焦点が合わなくなり、スマホの文字はぼやけて読めません。もはや調べようもなく、私は“まな板の上の鯉”のような心境で手術を受けることにしました。
処置室で見た緑の閃光
暗い処置室で、まぶたを固定されたまま、緑色のレーザー光が眼底にピカッ、ピカッと走ります。数十発の光が放たれる間、我慢できる程度の痛みがあるだけで済みました。
まさか、初めて行った眼科で、その日のうちに手術を受けることになるとは思いもよりませんでした。

