予防策と解決の道
これら2つの事例から導き出される結論は、明確です。相続トラブルは、当事者同士による話し合いでは解決できません。
親族間の感情的葛藤は、時間とともに深刻化するばかりです。唯一の有効な対策は、早期に専門家を介入させることです。
税理士、弁護士、不動産鑑定士といった専門家が関与することで、「この分け方は公正である」という客観的な保証が得られます。後々の禍根も軽減されるのです。
親が健在なうちに、次の項目を確認しておくことが重要です。
第一に、相続する土地が「建築基準法上の道路」に面しているかを役所で確認します。接道義務の有無は、物件価値を大きく左右するのです。
第二に、地域の住民協定や条例を調査します。最低敷地面積の制限は、田園調布に限らず、多くの高級住宅地に存在しています。
第三に、不動産会社に相談して市場価値を正確に把握します。特に昭和の高度成長期に開発された郊外や地方の物件は、予想外に価値を喪失している可能性があるとされています。
「そのような話は縁起が悪い」と考える人も、少なくありません。
しかし、仲が良い家族ほど危険なのです。良好な関係が存在するからこそ、一度崩れたときの反動は大きくなります。相続前に家族で話し合うことは、必要不可欠な議論です。
親が元気なうちに、感情的にならずに冷静に相続計画を検討しましょう。それが、家族関係を守る唯一の手段といえます。
