隠していた借金と妻のクレカを無断利用したことを理由に離婚を請求されていますが、離婚したくありませんーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は結婚して3年で、すでに別居して4カ月ほどだそうです。別居の理由は、相談者の借金が発覚したことと、妻のクレジットカードを無断で70万円ほど使用していたことでした。借金の理由は「レスのため風俗に通っていた」からだといい、消費者金融で借金をしていたそうです。
妻は弁護士を立てて離婚調停を申し立てており、離婚の意思は固いようです。しかし、相談者は離婚を望んでいません。一方で相談者は、風俗通いなどに至るまでに、妻が性交渉に応じてくれなかったことや理不尽な言動に我慢してきたという思いもあるようです。
相談者が心配するように、こうした状況でも、妻の希望どおり離婚は認められてしまうでしょうか。
●夫側に「離婚原因」が認められる
離婚は、夫婦が合意すれば成立します(協議離婚)。合意がない場合には、家庭裁判所での調停、それでも不調に終われば裁判での判決があれば離婚が成立します。
裁判で離婚が認められるのは、民法第770条1項の離婚事由がある場合に限られます。
本件では、相談者は風俗を利用しており、性行為を伴う場合などには「不貞」(770条1項1号)にあたる可能性があります。
また、風俗利用、借金発覚と妻のクレジットカードを無断で使用したことが、夫婦関係破綻の大きな原因となっており、「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」(同条同項5号)にあたる可能性があります。
●妻側の事情は考慮されないのか?
一方、相談者が「妻からのセックスレスや理不尽な言動」を主張し、妻側にも問題があったのではないかと考えている点についてはどう考えるのでしょうか。
たしかに、セックスレスは、それ自体が「婚姻を継続しがたい重大な事由」の一つとして判断されることがあります。
そして、一般に、離婚原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求は認められないとされています。
しかし、夫婦の両方に「有責」といわれるような事情がある場合でも、もっぱら一方が婚姻関係破綻の原因を作った場合には、原因を作った側からの離婚請求は原則として認められない一方で、そうでない側からの離婚請求は認められるとされています。
本件では、たしかに妻側に原因のあるセックスレスや理不尽な言動も問題ではあるものの、その時点では別居などに至っていなかったそうですので、婚姻関係は破綻していないといえます。
そして、別居の直接の原因は相談者の借金とクレジットカードの無断使用にあります。いくらセックスレスが辛かったとはいえ、配偶者の財産を無断で使用することが「お互い様」とはいえないでしょう。
したがって、他に妻側に破綻の原因となるような事情がない限り、夫婦関係破綻の主たる原因は相談者側にあると評価される可能性が高いでしょう。
相談者が離婚を拒否し続けたとしても、いずれ妻からの離婚請求が認められてしまう可能性は高いと考えられます。
なお、本件では別居期間が4カ月とのことですが、この期間が長引くほど、「破綻」が認められやすくなり、離婚請求がより認められやすくなると考えられます。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

