
桜田ひよりと佐野勇斗がダブル主演を務めるドラマ「ESCAPE それは誘拐のはずだった」(毎週水曜夜10:00-11:00、日本テレビ系/Huluにて配信)が現在放送中。WEBザテレビジョンでは、本作を手掛ける秋元孝之プロデューサーにインタビューを実施。ドラマの制作秘話や桜田・佐野の演技の魅力、12月10日(水)に放送される最終話の見どころなどを聞いた。
■企画の原型は20年以上前に誕生
――ここまでの視聴者からの反響は、どのように受け止めていらっしゃいますか。
ありがたいことに、予想以上の反響をいただいています。その中でも一番手ごたえを感じているのが、SNSです。見ていると、主演の桜田さんや佐野さんのファンの若い世代に刺さって、キャラクターを愛してくれている。もう桜田さん、佐野さんじゃなくて、ハチ(八神結以)、リンダ(林田大介)として見てくれている。志田未来さんなんて、ガンさんとしか呼ばれていないくらい(笑)。登場人物がキャラクターとして育っている手ごたえがあります。視聴者の皆さんが、ドラマの世界に一緒に入ってくれて、一緒に楽しんでくれているのは素直にうれしいです。
――そもそも、「ESCAPE それは誘拐のはずだった」の企画が立ち上がったきっかけは何だったのでしょう。
このドラマの原型ができたのは、20年以上前なんです。プロデューサーになりたての僕は、「プロデューサーとは企画書を書くものだ」と言われて、半年で100本ほどの企画書を作成。その中の1つだったこの作品の原型を5年前までいろいろな要素を加えて第20稿くらいまで進めていたのですが、止まってしまって。
2年ほど前に、日本テレビで「オリジナル作品の企画募集」があって、「ここで企画書を出さないと、オリジナルドラマをやる気がある!と示せない」と思って、止まっていた企画をもう一度引っぱり出して、新しい要素を入れて、新しいキャスティングプランに変えて提出しました。
――ということは…構想20年!
ずっと考えてたわけではないので、厳密には20年ではないのですが(笑)。若いころの企画書をもう1回読んでみると、「こういうのをやりたかったんだ」「こういうのを面白いと思ってたんだ」という今の自分の中にはない、忘れていた感情が見えたのが面白かったです。それをおじさんになった今だからわかる「これじゃ通らないよ」というところを直して、面白そうなところを広げた。若いころの自分の企画書を、経験を積んだ今の自分で書き換えたのが、この企画の始まりでした。
今の僕だったら、恋愛あり、友情あり、逃走劇あり、事件あり、超能力ありのごった煮みたいな、総合エンターテインメントな企画書は書かないと思います。再読して「欲張りだな」と思ったけれど、そのガチャガチャしている感じが今っぽく感じたんです。
■“逃走犯っぽくない”服装にもこだわりが!
――この全部盛りな感じって、すごくマンガっぽいですよね。
今の時代、ドラマのライバルはアニメだと思っているんです。アニメばかりを見ている若い層にも、是非ドラマも見てほしい。だからリアリティーよりも、若い人たちに響くアニメのようなキャラクターや画作りを意識しました。普通のドラマなら、ホテルに潜入して社長令嬢を誘拐する場合、服は目立たない色にするじゃないですか。でもそれだと面白くないから、とても目立つオレンジ色のつなぎ着にしたり、マンガっぽいテロップを入れたりしてみました(笑)。
――衣装のお話しがありましたが、衣装も逃走犯っぽくないですよね。特にリンダの衣装は、佐野さんの私服じゃないかと思うテイストで。
そうなんです(笑)。ドラマに入る前に、僕と佐野さんでキャラクターについての打合せをしたとき、佐野さんから「金髪」「ピアス」という提案が出て。しかも、その日着ていた佐野さんの私服が想像していたリンダのイメージと似ていて、その私服写真を元に衣装を揃えてもらいました。佐野さんはアーティストなので、自分が一番よく見えるものがわかっている。リンダとかけ離れていない印象だったので、「佐野さんの中のものがリンダとシンクロすればするほど、リンダがリアルになってくるな」と感じました。
衣装に関しては、ご本人たちとも相談して、桜田さんと佐野さんに似合う服、二人が着たいものをできるだけ選んでいます。普通の誘拐犯なら服を買いに行くなんてリスキーなことはせずに、同じ服を着ているはずだけれど、みんなが真似したくなるような、ワクワクする面白い世界をあえて追求しました。
――キャラクター作りに、ご本人が反映されているんですね。作中でも、佐野さんの可愛いところがよく出ていますよね。
それは桜田さんのスゴさでもあるんです。佐野さんの印象的なシーンって、アドリブが多いんです。でも面白いだけだとシーンの真の意味がずれてしまう。そこを桜田さんがしっかりキャッチして投げ返してくれているんです。桜田さんという名キャッチャーがいるから、リンダというキャラクターが成立しているところはある。ハチとリンダというキャラクターを作る二人の相性がすごく良かった。あの二人だからこそできたんだと思うので、とても感謝しています。

■桜田ひより&佐野勇斗の演技の魅力
――ハチとリンダ、主人公二人のキャラクターは、当初からあの感じだったのでしょうか。
実は、ハチはもうちょっと「ごきげんよう」的なお嬢様キャラだったんです。撮影前に二人共いろいろなキャラを考えてきてくれていて、最初の本読みの日に同じシーンを違うキャラで何回もやってみたんです。そんな時、休憩時間に二人がたわいもない会話をしているのを見ていたら、佐野さんがボケて、桜田さんがツッコんでいたんです。それを「今の感じ良かったよね」となって、ハチがツッコむ方にシフトしました。
――あのコンビネーションがあっての、ハチとリンダですよね。ハチとリンダを演じる桜田さんと佐野さんの俳優としての魅力は、どういうところにあると思われますか。
桜田さんは、どんなに難しいシチュエーションでも、どんな難しいセリフでも、「できない」と言わない。ちゃんと自分の中に落とし込んで成立させてしまうんです。脚本はあくまで設計図で、同じシーンを読んでもそこから連想するものは、十人十色。でも、その中で一番多くの人が感じるイメージを見分けて表現する能力がすごく高いと思います。さすが、芸歴18年目ですよね(笑)。歴戦の勇者らしく、お芝居がものすごくリアルなんです。僕らの想像を超えてくるレベルで、すごい女優さんだなと痛感しています。
佐野さんは、セルフプロデュース力がすごく高い。自分のことをちゃんと分かっている。アーティストであり、俳優であるという難しい立ち位置だからこそ、みんながいいと思うところを捉える力に長けているんでしょうね。それにコミュニケーション能力も高くて、どんな俳優さんとも、どんなスタッフさんとも仲良くなって、現場をものすごく盛り上げてくれる。まさにムードメーカーですね。
先日も佐野さんの所属するM!LKの紅白初出場が決まり、現場でも「おめでとう!」と盛り上がったのですが、そういうムードも追い風になっています。作りものではない空気感が映像にも現れて、自然とリンダにも影響しているんだと思います。
僕の考えるリンダ像は、ハチの背負っている重いものを笑い飛ばしてくれる人。「俺なんかもっとこうだし、あはははは」と言って、悩んでいる人が「うるさいな」と言うことで楽になるというか。佐野さん自身がそういう人なのかもしれません。だから佐野さんがリンダを演じると、現場の士気も上がる。ベテランの座長とは一味違う、彼の年代の彼なりの背中の見せ方というか、座長の振る舞いをしてくれて、すごくありがたいですね。
――人間らしいハチとリンダに、「さとり」という能力があるのもマンガっぽいですよね。
そうですね。普通のヒューマンドラマ、刑事ドラマじゃ若い子たちは見てくれない。「どうすればいい?」と考えたときに、『サイコメトラーEIJI』(日本テレビ系)や『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(TBS系)のようなファンタジー要素があってもいいのかなと思いました。みんなが「なんだか分からない」ものを1つ入れることで、突き抜けられる気がしたんです。リアルなヒューマンものだけでは描ききれない面白さは、若い層の視聴者が興味を持ってくれる要素だと思いました。
■「ハチとリンダが最終的に何を選ぶのか見守ってください」
――最終回直前ですが、ここまででお気に入りのシーンはありますか?
第2話の冒頭ですね。リンダがパンクした車のタイヤを変えながら、ハチが「晶ちゃん(原沙知絵)に会いに行こう」というシーンがあるのですが、あのシーンが撮り終わった時に「ハチとリンダができたね」となりました。第1話と第2話を同時に撮っていたのですが、最初はどうしてもまだ、犯人と被害者というルールの中でキャラクターを演じていた二人でしたが、「一緒に逃げよう」となったときに、初めてリンダとハチの長い会話のシーンになったんです。そのときの二人のボケとツッコミの感じと、女の子がちょっと強気で男の子を翻弄しながらも、男の子はそれすら優しさで包んでるみたいな、理想のハチとリンダの形ができたなと思えた。それを見て小室直子監督と、「大丈夫だ!」と話したのをすごくよく覚えています。第2話は、TVerで見ることができますので、ぜひ見返してみてください。
――最後に、最終回の見どころを教えてください。
社会を巻き込んで大騒動を起こしてる二人が、最終的に自分たちでどういう選択をするのか、どういう道を選ぶのかというところに注目していただきたいです。逃げるという選択肢も間違いじゃないと思うんです。でも、大切な人ができて、その人と一緒にいたい、その人を守らなきゃいけないとなった時に、「果たして自分が逃げ続けていいのか?」と思う気がする。ぐっと踏ん張って何かに立ち向かったり、向き合ったりしなきゃいけない瞬間が誰しもあるのではないか…と。それがこの10話を通して、ハチとリンダが体現してくれていることなのかもしれません。だから、ハチとリンダが最終的に何を選ぶのか見守ってください。
◆取材・文=坂本ゆかり


