吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
季節の手仕事、創造の醍醐味
季節の恵みを整える。その恵みをいただくために、コツコツと下準備をする。
それを○○仕事と言い、楽しむのも季節のささやかな行事のようなもの。
初夏の梅仕事はその代表格で、青梅のアク抜き、竹串でヘタをとり、梅干しなら天日干しをし、塩漬けにして、紫蘇漬け梅に。
梅酒、梅シロップ、ジャムにも甘露煮にも。
出来上がるまでに何ヶ月かかかるものもありますが、熟成されるまでの時間も楽しみのひとつです。
春には山菜、蕨や薇のアク抜きも手間と時間がかかります。
それもちょっとした山菜仕事。山椒の実を枝から外すのも、なかなか細かい、根気のある仕事です。
この秋、栗がたくさん届きました。そこで栗仕事。『栗坊主』という皮剥き器で硬い皮を剥きます。
これもなかなか難儀でコツを掴むまでちょっと時間がかかります。
渋煮と栗きんとん、初めてにしてはまあまあの出来。
そして次は銀杏仕事。『銀杏くん』で殻を割って、薄皮をとって…。
私は付属校に通っていたのですが、大学は外部受験をするつもりで受験コースをとっていました。
ところが家庭科の授業で編み物をして、これがなんとなく楽しい。
編みながらいろいろなことを考えられる。
一人の世界に集中できるというのでしょうか、決して器用ではないですが、このとき自分が手先の仕事が好きなことに気づいたのでした。
結局、外部受験することなく付属の大学に進学しました。
その一つの理由が、編み物が楽しかったから…です。まあ、受験勉強したくなかったということもあるのですが。
梅仕事や栗仕事などの季節の手仕事は、無心になれる時間でもあります。
または、手を動かしながらいろいろな思いをめぐらせる。
旬のものを美味しく仕上げることも楽しい。
こんな手仕事の時間、とても気に入っているのです。
もしかしたら太古の時代から受け継いできた手仕事の記憶が目覚めるのかもしれません。
例えば動物の骨や石からやじりを作る。
それはおそらくとても手間も時間もかかる作業だったでしょう。
それでも人々は知恵を絞り、工夫して道具を作りました。
淡々と手を動かし、手間をかけ、試行錯誤し、知恵を絞りながら一つ一つ作り上げてきたのでしょう。
人類の歴史は、そんな手仕事の創造の醍醐味が作ってきたのかもしれません。
冬は、守られる季節。寒さから、喧騒から。
暖かい部屋でコツコツと、黙々と。静けさの中に響く微かな音が紡ぎ出す時間の豊かさを、しみじみと味わいたいこの頃なのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
[文/吉元由美 構成/grape編集部]

