夫も娘も、ASDと診断された
アコとユーマの長女、しずくは他の子どもより癇癪が多く、アコは専門医に相談しようと決意します。しかしユーマはどこか冷ややかな態度。アコはただ、もしも娘に発達障害があるのなら、その個性にふさわしい育て方をしたい、と願っただけなのです。しずくの診断結果は発達障害のひとつ、ASD(自閉スペクトラム症)でした。IQは平均的で知能にも問題はありません。一安心したアコでしたが、他にも気がかりがありました。しずくは赤ちゃんの頃からパパであるユーマを避け、怯えていたのです。
パパは笑わないからイヤ、というしずくの声に、アコはハッとします。ふと、ネットで発達障害を掘り下げてみたら、その特徴はユーマにもほとんど当てはまっていました。愕然とするアコですが、夫と心が通わない日々に絶望していた中で、自分はカサンドラ症候群かもしれない、と気づいていったのです。
そして、夫も離婚後にASDの診断を受けていました。2025年8月に完結したブログ漫画「アスペルガー夫と離婚した後の話」によると、離婚をめぐる夫の行動は、かなり予想外なものでした。



































笑えなくなったアコが選んだ道
子供のこと、家のことは妻任せ、という夫も世の中にはたくさんいるでしょう。アコの悩みも<事象だけを見れば、どこの家庭にもあるようなエピソードだったりする>のです。<ただ、その質と量が違う>のも事実。いつしか笑えなくなったアコは、本来の自分を取り戻すために、ユーマに離婚を切り出します。ユーマは当然反対するのですが、ユーマの物言いはやはりどこかズレていて……。
本書の続編ブログを読むと、いかに長い結婚生活の間に、アコがユーマとの生活に区切りをつけたか、その大変さがわかると思います。
生きていく上で、さまざまな個性の持ち主と出会います。お互いを尊重しつつ絆を深めていける場合はいいのです。でももしどちらかがつらくなってしまったら。
人生を守るのは、自分自身。アコの勇気と生き方が、参考になるのではないでしょうか。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx

