優美な美人画から相撲絵まで
勝川春章《江口の君図》, Public domain, via Wikimedia Commons.
勝川春章の活躍の場は、役者絵に留まりません。美人画の分野では、独自の優美な画風を確立し、多岐にわたるテーマの作品を残しています。春章の描く美人画は、丸みを帯びた優雅な顔立ちと、繊細な衣装の描写が特徴です。
その他に、相撲絵や肉筆画の分野でも高い評価を得ています。肉筆画は紙や絹に直接描かれた一点物の絵画であり、春章の洗練された画力が発揮されています。また、春画も幅広い表現力の一つとして、美術史の中で位置づけられています。
勝川春章の代表作
勝川春章の代表作といわれるものは美人画が多く、高い画力が発揮されています。以下では主要な作品を3つご紹介します。
「雪月花図」
勝川春章《雪月花図》, Public domain, via Wikimedia Commons.
「雪月花図」はその名の通り雪月花という、日本画の伝統的なテーマを描いた三幅対の作品です。
それぞれ異なる季節の情景の中で、着物姿の女性たちが優雅に佇む様子が描かれています。春章の美人画の特徴である、ふっくらとした顔立ちと、着物の柄や質感の丁寧な描写が見どころです。
「婦女風俗十二ケ月図」
「婦女風俗十二ケ月図」は、1月から12月までに対応する女性の風俗や行事を描いたシリーズ作品です。
月ごとの細やかな生活の様子を通して、当時の女性たちの暮らしや流行をいきいきと伝えています。春章の美人画における卓越した構成力と、風俗描写の正確さを示す貴重な資料です。
参照:《婦女風俗十二ケ月図》MOA美術館蔵
https://www.moaart.or.jp/collections/078/
「美人鑑賞図」
「美人鑑賞図」は屏風の前でくつろぐ女性たちを描いた作品で、春章の肉筆美人画を代表する一つです。
繊細な色彩と、しなやかな線で描かれた女性たちの姿は上品で優美です。発注者と思われる当時の上流階級の間でも、春章の肉筆画が珍重されていたことを示しています。
参照:《美人鑑賞図》出光美術館
https://idemitsu-museum.or.jp/collection/painting/ukiyoe/03.php
