「NHKの取材には応じない」と決めた理由──サリン被害者が考える"声の届かない構造" 映画監督さかはらあつし

「NHKの取材には応じない」と決めた理由──サリン被害者が考える"声の届かない構造" 映画監督さかはらあつし

●なぜ、被曝被害者の救済が見えにくいのか

国家の役割は本来「国民の生命と安全を守ること」であり、そのために権力が与えられている。中学生の教科書にも出てくるほど基本的な原則だ。

しかし、日本では、事件の責任がオウム真理教と後継団体に押し付けられ、「加害者が補償すべきだ」という枠組みが強く働いた。その結果、拡大させないようにコントロールしながら団体を存続させつつ、補償義務を負わせるという、相反するあるいは倒錯する側面を抱えた構造になったように見える。

こうした中で、社会に伝えられてきたのは、主に遺族の声であり、被曝被害者の実態は十分に共有されてこなかった。

多くの被曝被害者自身も、この全体像を知らない。PTSDなどの事情から、この手の情報から距離を置くケースも多いのだが、そもそも報道される機会が極めて少なかったためだと私は考えている。

●公共放送の「理解する力」「伝える力」への疑問

こうした複雑な構造を丁寧に社会へ伝えることは、本来、公共放送であるNHKの重大な使命のひとつではないか──。私はそう考えてきた。

しかし、私が経験してきた取材の過程を見る限り、この問題の本質が十分に扱われてきたとは感じられず、次第に強い疑問を抱くようになった。その原因はNHKに「理解する力」「伝える力」が不足しているからだと思う。

私の体験はあくまで一例であり、ここで扱うのは個々の取材者ではなく、構造そのものの問題である。

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