ストレス性胃腸炎の検査と診断、治療法と日常生活の注意点

ストレス性胃腸炎の検査方法と診断基準を教えてください
検査は、血液検査では炎症や貧血、臓器の異常を調べ、便の検査で感染や出血の有無を確認します。腹部超音波では、胆のうや膵臓などの消化器の状態を評価します。
みぞおちの不快感や胃もたれが続く場合は、胃カメラで潰瘍や腫瘍などの器質的疾患を除外します。異常がみられず、胃のもたれや早期満腹感、みぞおちの痛みなどが3ヶ月以上続き、発症が6ヶ月以上前にさかのぼる場合には、機能性ディスペプシア(FD)が疑われます。FDは胃の運動や知覚の過敏が関係し、ストレスによって症状が強くなる傾向があります。
一方、腹痛と便通の変化が中心の場合は大腸内視鏡検査を行い、炎症性腸疾患や腫瘍を否定します。器質的な異常がなく、腹痛が3ヶ月以上続き、排便によって症状が変化する、または便の回数や形状が変わるときは、過敏性腸症候群(IBS)と診断します。IBSも発症から6ヶ月以上経過していることが条件で、ストレスや生活リズムの乱れが症状の変動に関与します。
このように、ストレス性胃腸炎の診断は、単に異常がないことを確認するのではなく、症状の持続期間・特徴・心理的要因を総合的に判断します。
参照:
『機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第 2 版)』(日本消化器病学会)
『機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2 版)』(日本消化器病学会)
ストレス性胃腸炎と診断されたらどのような治療が行われますか?
治療は、薬物療法と生活習慣の調整を組み合わせて行います。胃痛や胃もたれには胃酸分泌を抑える薬や胃の運動を整える薬を、便通異常が中心のときは整腸剤や便秘薬を用います。症状が長引いて神経の過敏さが目立つ場合には、少量の抗うつ薬を使って痛みの感じ方をやわらげる治療も行います。
また、ストレスそのものへの対応も欠かせません。カウンセリングや認知行動療法を通してストレスと症状の関連を整理し、ストレス反応を軽減することで再発を防ぎます。睡眠不足や過労が続くと回復が遅れるため、休息を確保することも治療の一環です。症状が慢性的に続いても、医師と相談しながら治療を継続することで、徐々に症状が落ち着くケースは多くあります。
ストレス性胃腸炎の人が日常生活で気を付けることを教えてください
規則正しい生活と消化がよい食習慣が基本です。三食を一定の時間にとり、よく噛んで食べましょう。脂っこい料理や香辛料、アルコール、カフェインは胃を刺激するため控えめにします。夜遅い食事や就寝前の飲食は胃酸の逆流を招きやすく、症状を悪化させる原因です。夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませるとよいでしょう。
さらに、適度な運動や休養も大切です。散歩や軽いストレッチ、深呼吸などは自律神経を整え、胃腸の働きを助けます。ストレスを溜め込まないためには、趣味や人との交流など、気持ちを切り替える時間を意識的に持つことが効果的です。症状が出たときには焦らず、ストレスと症状の関係を理解して生活を見直しましょう。
編集部まとめ

ストレス性胃腸炎は、心身のストレスや生活リズムの乱れによって胃や腸の働きが不安定になる病気です。みぞおちの痛みや胃もたれ、下痢や便秘などが起こり、症状はストレスの影響で変動します。
治療では薬に加えて、食事・睡眠・運動など生活を整えることが重要です。黒色便や血便、強い痛みがある場合は別の病気の可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。焦らずに身体と向き合い、医師と一緒に対処していくことが大切です。
参考文献
『機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第 2 版)』(日本消化器病学会)
『機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2 版)』(日本消化器病学会)
『過敏性腸症候群(IBS)』(慶應義塾大学病院)
『機能性ディスペプシア(FD)』(慶應義塾大学病院)

