「嚥下障害のリハビリ」で行う2つの方法とは それぞれの特徴を言語聴覚士が解説

「嚥下障害のリハビリ」で行う2つの方法とは それぞれの特徴を言語聴覚士が解説

「食事中にむせる」「食事を上手く飲み込めない」といった症状が起こる「嚥下障害」。高齢者だから仕方ないと放置されがちな嚥下障害ですが、実は早い時期から適切なリハビリをおこなえば改善できる可能性があります。嚥下障害のリバビリについて、言語聴覚士の大井さんを取材しました。

大井 純子

監修言語聴覚士:
大井 純子(言語聴覚士)

北里大学医療衛生学部卒業。大学卒業後、回復期リハビリテーション病院、総合病院に勤務したあと、訪問看護ステーションで訪問STとして勤務している。「症状で悩む方の役に立つ記事をわかりやすく説明する」ことを目標に執筆活動に励む。

編集部

嚥下障害に対するリハビリテーションでは何をするのでしょうか?

大井さん

嚥下障害に対するリハビリは、食べるための機能の維持や向上のためにおこない、「間接訓練」と「直接訓練」の2種類に分けられます。間接訓練とは食べ物を使わない訓練のことで、嚥下に関わる基礎的な力を向上させることが目的の訓練になります。全身の状態が整っていればどのような人にもおこなえます。直接訓練は食べ物を用いる訓練で、安全に飲み込む方法を身につけたり、食べること自体で飲み込む機能を改善させたりする目的でおこないます。

編集部

食べ物を使わないリハビリについて教えてください。

大井さん

嚥下(飲み込み)に関して、障害された場所に対応したトレーニングをします。いくつか代表的な訓練を紹介しましょう。

・口の体操(舌や唇、顎の体操など)
・頭部挙上訓練(飲み込みに必要な首の前側の筋力トレーニング)
・のどのアイスマッサージと空嚥下(唾を飲み込む)
・呼吸訓練
・首のストレッチ

障害された部位の筋肉トレーニングにくわえて、飲み込みの反射が起きにくい場合には、のどの奥を冷たく刺激する「アイスマッサージ」などもおこないます。誤嚥した時にしっかり吐き出せるように呼吸練習も重要です。予防、改善などを目的に自宅でおこないたい人向けの嚥下リハビリ体操もあるので、気になる場合には調べてみてください。

編集部

食べ物を使うリハビリはどのような内容でしょうか?

大井さん

食べ物を使う直接訓練は、安全に飲み込む方法を身につけたり、食べること自体で飲み込む機能を改善させたりする目的でおこないます。嚥下障害があっても、「できるだけ安全な方法で食べ続ける」ことが、飲み込みの力の改善につながるのです。食べ物を使うリハビリで工夫する項目は次の通りです。

・食べ物の形態
・一口の量
・姿勢(ベッドのギャッジアップで上体を倒すなど)
・首の向き(首を左右に向けて食べる)

上記の項目を変えながら、最初はゼリーなどの飲み込みやすい形態から始めて、段階的に目標の食事に近づけていきます。

編集部

食べ物を使うリハビリの際、注意点があれば教えてください。

大井さん

食べ物を使った訓練には誤嚥のリスクを伴うために、実施には以下の条件を満たす必要があります。

・全身状態や呼吸状態が安定している
・意識がはっきりしている
・ある程度嚥下機能(飲み込みの機能)が保たれていて、工夫すれば食べられそう

編集部

食べられない時の栄養管理方法はどうするのでしょうか?

大井さん

口から食べられない、十分に食べられない時の栄養管理は、大きく分けて2種類あります。
・経静脈栄養法
・経腸栄養

経静脈栄養法は、消化機能が低下している際などに用いられ、血液中に水分や栄養を入れる方法です。経腸栄養は、鼻や口から入れたチューブを、食道や胃まで入れて、栄養を流し込む方法です。経鼻経管栄養(鼻から入れたチューブを胃まで入れて栄養を流し込む)、胃ろう(胃に孔を開けてお腹の外から挿入したチューブから栄養を流し込む)などがあります。どちらの栄養方法も、口から食べるのと並行できて、嚥下機能が改善して口から栄養が摂れるようになったら、チューブを取り外すことができます。

※この記事はメディカルドックにて【嚥下障害のリハビリはどんなことをする? リハビリの内容と注意点を言語聴覚士が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

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配信元: Medical DOC

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