乳がんは女性のイメージが強いかもしれまんが、男性にも乳腺があるため男性も発症します。乳がん全体で考えると、男性の発症率は1%程ととても少ないのが特徴です。
乳がんの認識不足などから見つかった際には進行しているケースも少なくありません。
今回は、男性の乳がんは痛みがあるのかや検査方法、治療方法などを紹介します。男性の乳がんが気になる方の参考になれば幸いです。

監修医師:
上 昌広(医師)
東京大学医学部卒業。東京大学大学院修了。その後、虎の門病院や国立がん研究センターにて臨床・研究に従事。2010年より東京大学医科学研究所特任教授、2016年より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を務める。著書は「復興は現場から動き出す(東洋経済新報社)」「日本の医療格差は9倍医療不足の真実(光文社新書)」「病院は東京から破綻する(朝日新聞出版)」「ヤバい医学部(日本評論社)」「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか(毎日新聞出版)」。
男性乳がんとは?
乳がんは乳房にできるがんで、男性にも乳腺が存在するため発症します。男性の乳がんは全乳がんの1%程といわれており、希少がんの1つです。希少がんは、人口10万人に6例未満のがんを指します。
発生部位
多くが乳頭乳輪下やその周辺で発生するでしょう。男性の乳房は女性に比べて乳腺組織が少ないため、乳房内に大きな腫瘤を作ることは少ないと考えられています。しこりや乳頭からの分泌物、痛みなどの症状が現れますが、自覚症状がないケースもあります。
好発年齢
幅広い年代で発生しますが、60〜70代で発症する方が増えるでしょう。男性の乳がんは女性に比べて予後が不良と考えられていました。しかし、近年では同じステージの場合、発症する年齢なども考慮にいれると男女で予後にほとんど差がないとされています。
危険因子
BRCA1やBRCA2などの遺伝的因子と内分泌的因子が考えられるでしょう。遺伝性の乳がんは、乳がん全体の5〜10%程とされており、遺伝子の異常による乳がんは35%程との報告もあります。
男性の乳がんの場合、20%程に家族に乳がんが認められています。男性の乳がんに関与が高いと考えられている遺伝子もあるそうです。また、男性の乳がんでも女性の乳がんと同じようにエストロゲンとの関連性が報告されています。
男性乳がんの検査方法
乳がんでは、どのような検査が行われるのでしょうか。乳がんと診断が出るまでには、主に3つの検査が行われます。
超音波検査
人間では聞くことができない程の高い周波数の超音波を使って、乳房内の状態やしこりの大きさ、性質などを調べる検査です。乳房周囲のリンパ節や腋窩などへの転移も調べることができます。
乳房の表面に超音波を送受信する超音波プローブをあて、体内の組織や臓器からはね返る反射波が映像となって現れます。しこりがあっても触れない25歳未満の場合、超音波検査は最初に選択される検査です。
マンモグラフィ
乳房専用のX線での撮影で、患部の場所や状態を調べるための検査です。2枚の板で乳房を挟んで圧迫・固定して行われます。マンモグラフィは男性でも行われる検査です。
乳腺は白く映り、脂肪は黒、しこりは白く現れます。早期の場合は、小さく白い粒状に映るでしょう。視診や触診、超音波検査では見つけにくい乳がんを見つけてくれます。
ただし、乳房が高密度で白い箇所が多い場合は、病変との鑑別がつきにくいでしょう。男性では、25歳以上の場合や身体診察で乳がんの疑いがある場合には、最初に行うことが推奨されています。
生検
細胞診と組織診があります。細胞診は、注射器で採取した細胞を顕微鏡で調べる検査法です。多くの場合、局所麻酔は行わず、病変部を超音波検査などで確認しながら細い針で行います。
乳頭に分泌物が出ている際には、分泌物の細胞も調べます。組織診は、細胞診で使う針よりも太めのものを刺して、組織をくりぬくように取り出して顕微鏡で調べる検査です。局所麻酔で行われます。

