2人目を無事出産した朱里は、日常が戻ってきたと実感した矢先に不倫の証拠を見つけてしまいます。チャットツールのやりとりで、フレンチ店へ2人が行くことを知った朱里。けれども、心はただ動揺するばかりで…。
悲しみのまま、友人へ電話をかけた
気づけば、チャットツールで彼らが待ち合わせを決めた時間になっていた。なのに私は家にいる。今ごろ勇は穂乃花と会って、フレンチコースを堪能しているのだろう。その後に控える行為を楽しみにして…。悲しい。でもどうしていいのかわからない。
スマホを手に取ると、友人・みどりに連絡した。みどりは学生時代からの友人で、昔から頼りになる存在だった。電話をしていいかとメッセージを送ると、すぐに彼女からかかってきた。
「どうしたの朱里?電話したいなんて珍しいじゃん」
「みどり…わ、私……うう」
突然泣き出した私の話を、みどりは黙って聞いてくれた。ママ友と夫が不倫をしていたこと。付き合いは2人目の出産前かららしいこと。そして今日、デートしていることを、たどたどしく話す。すべて話し終えると、みどりは落ちついた声で尋ねた。
「朱里が今日現場を押さえなかったのは、小さい子がいるから?」
「え?」
「それとも、現場を見たくなかったから?朱里は、どうしたいの?」
友人との対話で見えた自分の願い
彼女に聞かれて、初めて考えた。私が今日出向かなかったのは、幼い子どもたちを置いていけないから――そう答えるのは簡単だった。でも、真相はそこじゃない気がした。
「私…怖いの。夫と別れたくない。慰謝料も謝罪もいらないから、日常に戻ってほしい」
情けないけれど、それが私の本心だった。しばらくすると、みどりはこちらを尊重しながらも、厳しい意見を口にした。
「朱里が日常を壊したくなくて、現状維持を望む気持ちは否定しない。でもそれって、本当に幸せなの?」
彼女の問いに、私は答えられない。つまり幸せではない…ということなのだろう。
「わからない…」
「そう。朱里の人生に私は責任を持てないから、強くは言えない。でも、あなたの幸せを私は望んでいるよ」
みどりとの通話が終わった後、しばらく深く考えた。

