解離性障害の主な症状
解離性障害では、強いストレスやトラウマが原因で、記憶や感覚に異常が生じることがあります。自分が自分でないように感じたり、過去の記憶を失ったりすることが特徴です。解離性障害の主な症状には、以下の6つがあります。
解離性健忘
解離性遁走
解離性同一性障害
離人症性障害
解離性昏迷
解離性運動障害
それぞれの症状について詳しく解説します。
解離性健忘
解離性健忘(かいりせいけんぼう)は、特定の期間や出来事に関する記憶を思い出せなくなる症状です。強いストレスやトラウマが引き金となり、脳が心理的な負担を軽減するために記憶を遮断すると考えられています。認知症や記憶喪失とは異なり、脳の損傷が原因ではなく、心理的要因によって発生します。時間の経過や適切な治療によって記憶が戻ることもありますが、完全に思い出せないケースも少なくありません。失われる記憶の範囲は人によって異なり、数時間から数年分の記憶が欠落することもあります。仕事や人間関係に関わる記憶が抜け落ちた場合、日常生活や社会生活に影響を及ぼすことがあります。
解離性遁走
解離性遁走(かいりせいとんそう)は、強いストレスや心理的負担が原因で発生する障害です。解離性健忘の一種であり、特定の記憶が失われると同時に、意図せず遠くへ移動してしまうことがあります。本人は自分の名前や過去の生活を思い出せなくなり、元の自分を認識できなくなって、突然家を出て知らない場所へ行くケースがよく見られます。気付いたときには見覚えのない土地にいて、遁走中の記憶はほとんど残らず、どのように移動したのか思い出せないことも少なくありません。無意識のうちに新しいアイデンティティ(感覚)を持ち、異なる名前を名乗ったり、別の生活を送ったりすることがあります。その後、ある日突然過去の記憶が戻ることもあります。以前の記憶が戻ると「ここはどこだ」と強く混乱することがあります。この状態は一時的ですが、記憶を取り戻した後も遁走中の出来事を思い出せず、抑うつ状態に陥ることもあります。
解離性同一性障害
解離性同一性障害(かいりせいどういつせいしょうがい)は、一般的に多重人格と呼ばれることがある障害です。実際には、強いストレスやトラウマによって意識や記憶が分断され、異なる人格が現れることが特徴とされています。かつては多重人格障害(MPD)と呼ばれていましたが、アイデンティティや記憶が分離する状態を解離と呼ぶため、現在は解離性同一性障害(DID)という名称になりました。一人のなかに複数の人格が交代で現れ、それぞれ異なる性格や話し方、行動をとることがあります。記憶が途切れることもあり、本人が別の人格の存在を自覚していないケースも少なくありません。
離人症性障害
離人症性障害(りじんしょうせいしょうがい)は、自分が自分でないように感じたり、現実感が薄れたりする症状です。解離性は記憶やアイデンティティが分断されることを指し、離人性は自分自身や現実の感覚が遠のくことを指します。離人症性障害は解離性障害の一種ですが、これは解離が記憶だけでなく、自分の存在や現実感にも及ぶためです。記憶の喪失は伴わず、意識は保たれたまま違和感があります。自分の感情が希薄になり、何をしても現実感が持てなくなることがあるのが特徴です。まるで夢のなかにいるような感覚に陥り、自分の身体が自分のものではないように感じることもあります。離人症性障害は一時的な場合もあれば長期間続くこともあり、仕事や学業に集中しにくくなったり、感情が薄れて楽しみを感じにくくなったりするのも特徴です。また、人と関わることに違和感を覚え、対人関係がぎこちなくなることもあります。
解離性昏迷
解離性昏迷(かいりせいこんめい)は、意識はあるものの、外部からの刺激に対して反応しにくくなる症状です。突然身体が動かなくなったり言葉を発せなくなったりし、周囲の声かけや痛みなどにもほとんど反応しなくなります。症状が現れると、表情が乏しくなり、長時間横たわったままや座ったままの状態が続きます。意識があるのに話しかけられても応答がなく、後でその状況を部分的に覚えているケースも少なくありません。医学的な検査では異常が見つからず、極度のストレスや持続的な精神的負荷が関与していると考えられています。強い精神的ショックや不安を経験した後に発症し、一時的なこともあれば、長期間続くこともあります。症状が長引くと食事や身の回りの世話が困難になり、日常生活にも影響が出るため、適切な治療とサポートが必要です。
解離性運動障害
解離性運動障害(かいりせいうんどうしょうがい)は、神経や筋肉に異常がないにも関わらず、身体の動きに支障が出る障害です。手足が突然動かなくなったり、身体を思うように動かせなくなったりすることがあります。ほかの解離性障害が記憶の喪失や意識の変容を引き起こすのに対し、解離性運動障害は歩行・手足の動き・発話などの運動機能に影響を及ぼします。歩こうとしても足に力が入らず、腕を動かそうとしてもうまく動かせないといった症状です。手足の麻痺・震え・筋力の低下など、神経疾患と似た症状が見られ、脳卒中や神経疾患と誤診されることもあります。声が出なくなったり、呂律が回らなくなったりすることもあります。
解離性障害の治療法
解離性障害は、強いストレスやトラウマが原因で発症するため、治療は心のケアが必要です。解離性障害を直接治す薬はないため、心理療法を中心に治療を進め、必要に応じて薬物療法を併用します。解離性障害の治療法は、以下の2つです。
・心理療法
・薬物療法
それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。
心理療法
心理療法は、解離性障害の中心的な治療方法です。次の3つの方法があります。
・カウンセリング(精神療法)
・認知行動療法(CBT)
・タッピング療法(USPT)
解離性障害の治療の主体はカウンセリング(精神療法)とされています。カウンセリングによって対話を通じて患者が自分の感情や記憶を整理し、解離症状を軽減することを目的としている治療法です。認知行動療法は、心理療法として広く一般的な治療法で、思考の歪みを修正し適切な行動を促すことでストレスへの対処力を高めます。タッピング療法は、身体の特定の部位を軽く叩くことで、ストレスやトラウマの記憶を和らげる手法です。なお、解離性障害の治療法にはEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)が有効とする意見もありますが、禁忌とする説もあります。
薬物療法
解離性障害そのものを治す薬は存在しません。ただし、不安やうつ症状を和らげるために薬物療法が併用されることがあります。薬物療法に使用される薬は、次のとおりです。
・抗うつ薬(SSRIなど)
・抗不安薬
・抗精神病薬
抗うつ薬は抑うつ症状を軽減し、不安を和らげる効果が期待できます。抗不安薬は強い不安や緊張を緩和する薬です。抗精神病薬は解離症状が強い場合に補助的に使用されることがあります。ただし、薬物療法はあくまで症状の軽減を目的とした補助的な治療であり、根本的な治療には心理療法が必要です。

